dynabook TX/64Hの蘇生
一、再起動を繰り返すTX/64H
以前「NECのLaVieがLenovoのLaVieになる日」という記事で、ノートPCはNECのLaVieしか購入したことはないと書いたが、故障機とはいえ東芝のdynabook EX/33Jを譲り受け、このたびさらにdynabookのTX/64Hを頂いた。これもまた、故障したため前所有者が手放したものである。
このTX/64Hは、バッテリでは何ら支障なく使える。ところが、ACアダプタで使おうとすると、起動後数分から十数分後に突然電源が切れ、再起動がかかる。ACアダプタを使用する限り、これを繰り返すのである。
白の筐体にはさほどキズも汚れもなかったので、修理できるものなら修理して、娘に使ってもらおうかと考えた。
※ なお、ノートPCのCPU交換については、こちら(http://blog.phooen.com/blog-entry-75.html)にまとめたので参考までにどうぞ。
二、プロードライザ交換
さて、この症状であるが、ウェブで調べてみると、およそ2007年から2009年にかけて製造されたdynabookにしばしば見られるものらしい。原因は、「プロードライザ(Proadlizer)」というNECトーキンが開発した一種のキャパシタ(コンデンサ)の熱による劣化ないし寿命による劣化であると言われている。
このプロードライザとは、NECトーキンの説明によると「従来のデカップリング・キャパシタがカバーしていた、数10キロヘルツからギガヘルツまでの周波数領域のノイズを、1種類でカバーすることができるデバイスです。しかも、周波数の全領域で、従来のキャパシタの合成インピーダンスよりもインピーダンスの値が低いうえに、それが非常にフラットな特性を持っているという、優れた特徴を持っています。このため、これまで以上に、電源ラインを安定化させる特性を備えて」いるものである、ということになる(http://www.nec-tokin.com/product/proadlizer/feature.html)。電気の基礎知識すら覚束ない素人には、そのサイトにある説明を全て理解することは困難であるが、要するに従来CPU周りにあった様々な種類のデカップリング・キャパシタ(バイパス・コンデンサ)をこのプロードライザ1個に置き換えることが可能だということらしい。
これを交換すれば、改善するという。
dynabookに使われているプロードライザには、容量900μFの「OE907」と容量1200μFの「OE128」とがあるという。TX/64HにはOE907が使われており、両者は単に容量の違いだけでなく、構造上の違いがあるため同じものに交換すべきだとされている。しかし、OE128に交換して成功したという例も多くウェブに挙っている。
1.そこで先ず、プロードライザの入手であるが、OE907は手に入りづらく、OE128の方が容易に入手することができた
2.さて、TX/64Hの解体である。
図-1

図-2

図-3

図-4

図-5

図-6

図-7

図-8

図-9

図-10

3.さて、図-11に見える「NEC TOKIN OE907」とあるのが、プロードライザである。
図-11

図-12

4.新しいプロードライザを直に取り付けるには、専用の工具やハンダが必要なようであるから、我々素人は、すずメッキ
図-13

5.これを基板にハンダ付けするのである。
6.ともかく、通電可能であればよいだろうと、思った。
7.何が悪いのか。
三、導電性接着剤を発見
1.どうもハンダ付けは苦手である。うまくやれる自信がない。そう思っていたところ、Amazonで「ハンダいらず」という
図-14

2.これを同じように導電性接着剤で基板に接着させ、その上に瞬間接着剤を盛って固着させた。
3.そして、改めて組み上げ、電源を投入。
四、プロードライザ2個を並列に
振り出しに戻ってしまった。やはり、このような接着にはハンダ付けしかないようである。
1.再び、ハンダ付けに挑戦である。Youtubeでハンダ付けの達人の技を繰り返し見たりもした。
2.何が問題なのか。
3.諦めかけていたところ、ウェブで2個のプロードライザを並列に取り付けることによってdynabookを復活させたという
図-15

4.すると、バッテリでは起動するようになった。
五、インダクタ交換
プロードライザの交換では修理することは無理なのか。素人には、もはやお手上げである。
ここまでか、と断念しかけたとき、あるサイトで今度は、CPUに安定的に電源を供給するインダクタという部品を交換することによってこの症状が改善されたという記事を発見した(http://namba-reading.seesaa.net/article/388235971.html)。
1.東芝製のノートPCに多発する、ACアダプタ接続で再起動を繰り返すという症状の原因は、むしろこのインダクタに
2.先ず、CPUの直ぐそばに「R36」と書かれている10mm角のインダクタ2個をハンダごてで取り外さなければならない
図-16

3.交換用のインダクタは元のものより一回り大きく、厚みもあるため、基板によっては取り付けがかなり困難である。
図-17

4.ACアダプタで電源オン。Windowsが起動した。しばらく様子を見ていたが、再起動しないようである。
5.悲嘆に暮れかかったところで、これまで何度かプロードライザ交換に関する記事を読ませてもらっていた
6.そこで、「Always Low」のままで、ひよひよさんのCrystalCPUIDの「Multiplier Management」を使って、再起動に陥ら
図-18

六、ほかに手はあるが…
なぜ、ここまでしてもなお完全に改善させることができないのか。
おそらく、
プロードライザが、真正な良品でない可能性があること、
そのハンダ付けが不完全であること、
純正のインダクタを取り外すために、ハンダごてを長時間にわたって何度も基板に当てたことにより、その付近の基板上の部品が熱による劣化を生じているおそれがあること、
等が原因として考えられる。
交換したプロードライザの不良が原因であるならば、しかも良質なプロードライザを新たに入手することが困難であるとするならば、他のコンデンサを代替品として修繕することも可能であるらしい。ウェブにはタンタル固体電解コンデンサ(330μF 2.5V)を4個、プロードライザの替わりに取り付けて症状を改善させた例がいくつか見られる。これらをインターネットで購入することも可能である。
改めてプロードライザをタンタル固体電解コンデンサに付け替えることにより、完全に修復させうる可能性は、確かにある。が、しかしながら、もはや修理への意欲が萎えてしまった。ここ1か月以上夜な夜な、dybabookをいったい何度分解し、組み立て直したであろうか。たまたま手に入った中古のノートPCである。もうここら辺で勘弁して頂くことにする。
この一文が、2007年から2009年にかけて製造された東芝のdynabookに多発する、ACアダプタ使用時に再起動を繰り返すという症状から自らの手でdynabookを救出したいと思い立った方の一助になれば、取り立てて新しい情報を提供している訳ではないが、幸いである。
【追記】:七、やっぱりタンタルコンデンサに交換
やはりこのままでは、どうにも居心地が悪い。姉のdynabookの処理能力が弟のdynabookのそれより劣るというのもかわいそうである。PC自作オタクの意地もある。
タンタル固体電解コンデンサ(330μF 2.5V)を4個をウェブショップで購入。プロードライザを取り除き、ハンダ吸取線で余分なハンダを丁寧に取り除く。極性を間違えないように外側をプラスにし内側をマイナスにして取り付けなければならないが、なにせ基板の接着部の両極間の幅が狭いのでタンタルコンデンサを斜めに取り付けざるをえない。銅板等を間にかませて平行に取り付ける方法もあるようだが(図-19:「我楽多苑」http://garakutaen.sakura.ne.jp/otherpc/RefAX55D.htmlより)、私の技量では困難が伴う。通常は、図-20(「パソコンショップLUX-修理手記」http://pclux0821.com/syuuri.htmlより)のようにタンタルコンデンサを左右それぞれ同じ向きに取り付けるか、あるいはひし形に取り付けるようである。私は後者の形にした(図-21)。
図-19 図-20 図-21

基板側とコンデンサ側それぞれにハンダを付け、ハンダごてを基板側の一方の極に当てコンデンサを付けた後直ぐに他方の極のハンダを溶かして接着させるらしい。このタンタルコンデンサもまた非常に熱に弱いとのことなので、一瞬でことは済ませなければならない。これに失敗すれば、娘に新しいノートPCを買わざるをえない。ハンダ下手の私には尋常ならざる緊張を強いられる作業であった。
組み立て直して、電源投入。CPUに負荷をかけるためベンチマークを行ってみるが、電源は落ちない。数時間使用してみても再起動はかからない。ついにようやく、このTX/64Hの蘇生に成功。長い道のりであったが、それ故の達成感を味わっているところである。
結論として、このよう症状のdynabookの修理において私のような悲惨な目に会わないためには迷わず、インダクタを交換するか、又はプロードライザをタンタルコンデンサに交換するか、いずれかの方法をとるのがよいということになる。 (2014.11.12)
以前「NECのLaVieがLenovoのLaVieになる日」という記事で、ノートPCはNECのLaVieしか購入したことはないと書いたが、故障機とはいえ東芝のdynabook EX/33Jを譲り受け、このたびさらにdynabookのTX/64Hを頂いた。これもまた、故障したため前所有者が手放したものである。
このTX/64Hは、バッテリでは何ら支障なく使える。ところが、ACアダプタで使おうとすると、起動後数分から十数分後に突然電源が切れ、再起動がかかる。ACアダプタを使用する限り、これを繰り返すのである。
白の筐体にはさほどキズも汚れもなかったので、修理できるものなら修理して、娘に使ってもらおうかと考えた。
※ なお、ノートPCのCPU交換については、こちら(http://blog.phooen.com/blog-entry-75.html)にまとめたので参考までにどうぞ。
二、プロードライザ交換
さて、この症状であるが、ウェブで調べてみると、およそ2007年から2009年にかけて製造されたdynabookにしばしば見られるものらしい。原因は、「プロードライザ(Proadlizer)」というNECトーキンが開発した一種のキャパシタ(コンデンサ)の熱による劣化ないし寿命による劣化であると言われている。
このプロードライザとは、NECトーキンの説明によると「従来のデカップリング・キャパシタがカバーしていた、数10キロヘルツからギガヘルツまでの周波数領域のノイズを、1種類でカバーすることができるデバイスです。しかも、周波数の全領域で、従来のキャパシタの合成インピーダンスよりもインピーダンスの値が低いうえに、それが非常にフラットな特性を持っているという、優れた特徴を持っています。このため、これまで以上に、電源ラインを安定化させる特性を備えて」いるものである、ということになる(http://www.nec-tokin.com/product/proadlizer/feature.html)。電気の基礎知識すら覚束ない素人には、そのサイトにある説明を全て理解することは困難であるが、要するに従来CPU周りにあった様々な種類のデカップリング・キャパシタ(バイパス・コンデンサ)をこのプロードライザ1個に置き換えることが可能だということらしい。
これを交換すれば、改善するという。
dynabookに使われているプロードライザには、容量900μFの「OE907」と容量1200μFの「OE128」とがあるという。TX/64HにはOE907が使われており、両者は単に容量の違いだけでなく、構造上の違いがあるため同じものに交換すべきだとされている。しかし、OE128に交換して成功したという例も多くウェブに挙っている。
1.そこで先ず、プロードライザの入手であるが、OE907は手に入りづらく、OE128の方が容易に入手することができた
ので、止むを得ずそちらにした。OE128はネット・オークションでも多く出品されている。ハンダごては、持っていたはずだが見当たらないので、改めてハンダとともに購入した。さらに、プロードライザを基板に取り付けるために、すずメッキ線が必要ということでφ0.6mmのものを購入。
2.さて、TX/64Hの解体である。
(1) 本体裏のバッテリを取り外し、HDD用・メモリ用・オプション用のカバーを外し、HDD(マウントに装着されている)
とメモリを取り外す(図-1)。
とメモリを取り外す(図-1)。
※ 因みに、HDDやSSDを装着するための台を日本語では「マウンタ―」と表記されることが多いが、英語でこのような台を"mounter"を表記することはほとんどなく、調べてみると、"mount(ing) bracket"、"mount(ing) adapter"、"mount(ing) kit"、"mount enclosure"などやこれらを組み合わせた表記が一般的に使用されている。"mounter"とは、PCのパーツをマウントする(搭載・装着する)ための工具やソフトウェアを指す言葉である。従って日本語では「マウント」と表記するのがよいのではないかと思う。たいしたことではないが、気になったので。
図-1

(2) 図-2の○で囲った21個所のネジを外す。
ともかく、嫌になるほどネジが多いので、ネジを外すときだけは、充電式のインパクト・ドライバを使った。もっとも、ネジ締めのときにインパクト・ドライバを使うと、筐体のプラスチックを割ってしまうおそれがあるので、締めるときは手でするしかない。
図-2

(3) 次に、キーボードを取り外す。
図-3にある細長いカバーのDELキー辺りの隙間に、PCにキズがつかないようなプラスチックのピンセットなどを差し込んで上方に持ち上げると、このカバーは簡単に外れる。
図-3

図-4に示した2箇所のネジを外し、キーボードを少し持ち上げると、斜めに抜ける(「dynabookのCPU交換」参照)。
図-4

図-5のようにキーボードのフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)のストッパーを矢印の方向に少しずらすと、基板からケーブルを容易に抜くことができる。
図-5

(4) キーボード下の筐体を取り外す。
図-6に示したネジを外し、コネクタ(1箇所)、フレキシブル・ケーブル(2箇所。これらにもストッパがある。)を抜き、キーボード下の筐体を底面の筐体と噛み合っているツメを壊さないように順次、ゆっくりと丁寧にはがし取っていく。
図-6

(5) 図-7のようにDVDドライブを抜き取る。
図-7

(6) 基板を取り出す。
図-7のオレンジ○2箇所のネジを外し、赤○の7箇所のコネクタを抜くと、基板を取り出せる。ただし、電源コネクタは裏側にあるので、基板を取り出した後の方が、拔きやすいかもしれない(図-8)。
図-8

(7) プロードライザ交換作業の前に、CPUファン、ヒートシンク、CPUも取り外しておく。ハンダの熱でCPUを傷めない
ためである。
図-9の4箇所のネジを外し、1箇所のコネクタを拔いて、CPUファンとヒートシンクを取り外す。
なお、CPUファンやヒートシンクには埃が溜まっていることがあり、これが排熱を妨げ、熱に弱い部品の劣化・損傷を招くことになるので、丁寧に掃除をしておく。
図-9の4箇所のネジを外し、1箇所のコネクタを拔いて、CPUファンとヒートシンクを取り外す。
なお、CPUファンやヒートシンクには埃が溜まっていることがあり、これが排熱を妨げ、熱に弱い部品の劣化・損傷を招くことになるので、丁寧に掃除をしておく。
図-9

図-10のPGA478のネジを左に回し、CPUを取り外す。
図-10

3.さて、図-11に見える「NEC TOKIN OE907」とあるのが、プロードライザである。
図-11

これを取り外さなければならないが、ウェブ上には何通りかの取り外し方が紹介されている。最も簡単なのが、カッターで少しずつ切りはがしていく方法であろう。ともかく、基板を破損してしまわないように慎重に行わなければならない。
図-12が、プロードライザをはがした取ったところである。
図-12が、プロードライザをはがした取ったところである。
図-12

4.新しいプロードライザを直に取り付けるには、専用の工具やハンダが必要なようであるから、我々素人は、すずメッキ
線をプロードライザにハンダ付けして、そのすずメッキ線の足を基板にハンダ付けするしかないようである。ウェブによると図-13のように中央のすずメッキ線はU字型にした方がよいらしい。
図-13

コンデンサを始め、PC基板上のチップなどは熱に弱く、ハンダ付けは素早く行う必要があると、盛んに注意が促されている。プロードライザは特にそうだという。40Wのハンダごてを使ったのだが、「素早く、素早く」と焦って、なかなかハンダがうまく乗らなかった。
5.これを基板にハンダ付けするのである。
これもまた、あまりうまく行かない。腕が悪いのか、ハンダごてが悪いのか。方々のサイトにアップされている写真は、どれもきれいにハンダ付けされている。悲しいかな、腕が悪いのは間違いなさそうである。
6.ともかく、通電可能であればよいだろうと、思った。
元に戻して、ACアダプタをつないで、電源オン。
画面は真っ暗なまま、dynabookのロゴすら現れない。バッテリだけにしてみても、起動する気配はない。
やはりハンダ付けが悪いのか。再び、分解してハンダを付け直してみたが、同じである。
画面は真っ暗なまま、dynabookのロゴすら現れない。バッテリだけにしてみても、起動する気配はない。
やはりハンダ付けが悪いのか。再び、分解してハンダを付け直してみたが、同じである。
7.何が悪いのか。
ハンダ付けに手間取って、プロードライザを熱で駄目にしてしまったのか。余分に買っておいたプロードライザでやり直すしかないのか。
三、導電性接着剤を発見
1.どうもハンダ付けは苦手である。うまくやれる自信がない。そう思っていたところ、Amazonで「ハンダいらず」という
謳い文句の導電性接着剤を発見した。「銀導電性接着剤(Agペースト)はエポキシ樹脂とAg(銀)を組み合わせたもの」だという。これはありがたい。早速、この注射器型の導電性接着剤を購入。
これを使って、新たにプロードライザにすずメッキ線を接着してみた。
しかし、完全に乾燥させるために24時間以上おいてみたが、少しの力ですずメッキ線は外れてしまう。「強度が必要な場合は、その上から接着剤などで補強してください」と商品の説明にある。そこで、乾燥させた導電性接着剤の上に粘度の高い接着剤を盛り上げて固定させることにした。その出来上がりが、図-14である。
これを使って、新たにプロードライザにすずメッキ線を接着してみた。
しかし、完全に乾燥させるために24時間以上おいてみたが、少しの力ですずメッキ線は外れてしまう。「強度が必要な場合は、その上から接着剤などで補強してください」と商品の説明にある。そこで、乾燥させた導電性接着剤の上に粘度の高い接着剤を盛り上げて固定させることにした。その出来上がりが、図-14である。
図-14

2.これを同じように導電性接着剤で基板に接着させ、その上に瞬間接着剤を盛って固着させた。
3.そして、改めて組み上げ、電源を投入。
しかし、またも起動しない。ACアダプタ、バッテリともにdynabookのロゴすら出てこない。
なぜなのか。
またまた、分解。外側を覆った瞬間接着剤はカチカチに固まっているが、中の導電性接着剤は割れてメッキ線が浮いた状態になっていた。
この導電性接着剤の接着力は極めて弱く、平坦な端子の上にすずメッキ線を乗せた状態で、これを固着させるには無理があると言わざるをえない。その接着力は、プリント配線の補修か、せいぜい極小電子部品の接着に使える程度であろう。
※ なお、この注射器型の接着剤については、その中の接着剤は粘度が高いためかなり力を込めて押し出さなければならず、その際に先端の針が飛び出してしまうことがあるので注意を要する。私の場合は、ポンという音とともに左手人差し指の腹に突き刺さった。貫通したかと思うほどの勢いであった。実際の傷の深さは5~6mm程であったが、痛みはしばらく続いた。何より体内にAgペーストとエポキシ樹脂がわずかながら注入されたことになるので、その影響を心配していたが、たいしたことはないようである。しかし、周りに人がいた場合には非常に危険なので、その取り扱いにはくれぐれも気を付けて頂きたい。
なぜなのか。
またまた、分解。外側を覆った瞬間接着剤はカチカチに固まっているが、中の導電性接着剤は割れてメッキ線が浮いた状態になっていた。
この導電性接着剤の接着力は極めて弱く、平坦な端子の上にすずメッキ線を乗せた状態で、これを固着させるには無理があると言わざるをえない。その接着力は、プリント配線の補修か、せいぜい極小電子部品の接着に使える程度であろう。
※ なお、この注射器型の接着剤については、その中の接着剤は粘度が高いためかなり力を込めて押し出さなければならず、その際に先端の針が飛び出してしまうことがあるので注意を要する。私の場合は、ポンという音とともに左手人差し指の腹に突き刺さった。貫通したかと思うほどの勢いであった。実際の傷の深さは5~6mm程であったが、痛みはしばらく続いた。何より体内にAgペーストとエポキシ樹脂がわずかながら注入されたことになるので、その影響を心配していたが、たいしたことはないようである。しかし、周りに人がいた場合には非常に危険なので、その取り扱いにはくれぐれも気を付けて頂きたい。
四、プロードライザ2個を並列に
振り出しに戻ってしまった。やはり、このような接着にはハンダ付けしかないようである。
1.再び、ハンダ付けに挑戦である。Youtubeでハンダ付けの達人の技を繰り返し見たりもした。
きれいなハンダ付けとはいいがたいが、前回よりもうまくいったような気がした。
しかし、またしても起動しない。
しかし、またしても起動しない。
2.何が問題なのか。
プロードライザの交換修理を行ってきたある修理業者のサイト(http://pclux0821.com/syuuri.html)によると、「粗悪なコピー品」や「使用期限を過ぎたプロードライザ」が大量に出回っているらしい。別の業者のサイト(http://pc-pc.biz/wp/7925)では、「50個中4個しか使えない時も」あったという。前者の業者は、2014年3月でプロードライザによる交換修理は中止し、それ以降はタンタルコンデンサによる交換修理に切り替えたとのことである。
そうだとすると、私の購入したプロードライザも不良品である可能性があり、それがために起動しないということも考えられる。そこで、参考までに、概略値ではあるが、コンデンサの容量を計測できるアナログテスターを持っていたので、プロードライザを計測してみた。
最初にハンダ付けを行った個体だけ、少し容量が足らなかったが、残りは取り立てて容量が不足しているということはなかった。上記のサイトにも書かれているように、単なる容量の問題ではなく、プロードライザとしての質の問題があるのであろうか。購入したプロードライザが全て品質に問題があるということであれば、このTX/64Hの蘇生は諦めるしかないのか。
そうだとすると、私の購入したプロードライザも不良品である可能性があり、それがために起動しないということも考えられる。そこで、参考までに、概略値ではあるが、コンデンサの容量を計測できるアナログテスターを持っていたので、プロードライザを計測してみた。
最初にハンダ付けを行った個体だけ、少し容量が足らなかったが、残りは取り立てて容量が不足しているということはなかった。上記のサイトにも書かれているように、単なる容量の問題ではなく、プロードライザとしての質の問題があるのであろうか。購入したプロードライザが全て品質に問題があるということであれば、このTX/64Hの蘇生は諦めるしかないのか。
3.諦めかけていたところ、ウェブで2個のプロードライザを並列に取り付けることによってdynabookを復活させたという
事例を見かけた。
諦めるにしても、これを試してからにしようと思った。何にせ、バッテリでは使えていたものを、手を加えたばっかりに廃棄物にしてしまうのは、あまりにも口惜しい。
図-15のように2個のプロードライザを並列に取り付けてみた。
諦めるにしても、これを試してからにしようと思った。何にせ、バッテリでは使えていたものを、手を加えたばっかりに廃棄物にしてしまうのは、あまりにも口惜しい。
図-15のように2個のプロードライザを並列に取り付けてみた。
図-15

4.すると、バッテリでは起動するようになった。
しかし、ACアダプタに換えると、途端に再起動を繰り返す。しかも、BIOS段階でdynabookのロゴを表示する前に再起動する。これでは、まだ元の症状よりもひどい状態である。
五、インダクタ交換
プロードライザの交換では修理することは無理なのか。素人には、もはやお手上げである。
ここまでか、と断念しかけたとき、あるサイトで今度は、CPUに安定的に電源を供給するインダクタという部品を交換することによってこの症状が改善されたという記事を発見した(http://namba-reading.seesaa.net/article/388235971.html)。
1.東芝製のノートPCに多発する、ACアダプタ接続で再起動を繰り返すという症状の原因は、むしろこのインダクタに
あり、これを適切な定数(インダクタンス、誘導係数)のものに交換することにより、100%改善するというのである。
このことを発表したのは、「有限会社テクニカルPC」という電子機器の修理およびメンテナンスを行っている会社である(http://www.tecn-pc.com/index.php?QBlog-20130131-1)。そのブログには、dynabookに用いられている0.36μH(マイクロ・ヘンリーと読むらしいが、このインダクタンスの単位に関するWikipediaの解説を見たが、微分方程式が云々かんぬんとあり、悲しいかなサッパリである)のインダクタをある定数のものに交換するとしか記載されていない。ノウハウということであろう。
そこには、しかし、「修理用インダクタキット(TIK-01)の販売を始めました。」とある。当然のことながら、会社としては修理を依頼してもらいたいところだが、一部のマニア向けにインダクタを売ってさし上げましょう、ということである。ありがたいと思うべきである。
ここまできたならば、やるしかない。これまでに費やした手間を無駄にする訳にはいかない。
早速、上記の会社に注文し、インダクタ2個を入手。代金1,600円に送料360円なり。単なるインダクタとしては少し高い気もするが、素人が適切なインダクタンスを見つけ出すのは容易ではないことからすれば、むしろ安いといえるかもしれない。
送られてきたインダクタには、その種類を特定できるような記載はない。その点に抜かりはない。取り付けのための写真入りの簡単な解説書が付いており、なかなか親切である。その指示に従って、インダクタの交換に取りかかる。
このことを発表したのは、「有限会社テクニカルPC」という電子機器の修理およびメンテナンスを行っている会社である(http://www.tecn-pc.com/index.php?QBlog-20130131-1)。そのブログには、dynabookに用いられている0.36μH(マイクロ・ヘンリーと読むらしいが、このインダクタンスの単位に関するWikipediaの解説を見たが、微分方程式が云々かんぬんとあり、悲しいかなサッパリである)のインダクタをある定数のものに交換するとしか記載されていない。ノウハウということであろう。
そこには、しかし、「修理用インダクタキット(TIK-01)の販売を始めました。」とある。当然のことながら、会社としては修理を依頼してもらいたいところだが、一部のマニア向けにインダクタを売ってさし上げましょう、ということである。ありがたいと思うべきである。
ここまできたならば、やるしかない。これまでに費やした手間を無駄にする訳にはいかない。
早速、上記の会社に注文し、インダクタ2個を入手。代金1,600円に送料360円なり。単なるインダクタとしては少し高い気もするが、素人が適切なインダクタンスを見つけ出すのは容易ではないことからすれば、むしろ安いといえるかもしれない。
送られてきたインダクタには、その種類を特定できるような記載はない。その点に抜かりはない。取り付けのための写真入りの簡単な解説書が付いており、なかなか親切である。その指示に従って、インダクタの交換に取りかかる。
2.先ず、CPUの直ぐそばに「R36」と書かれている10mm角のインダクタ2個をハンダごてで取り外さなければならない
(図-16)。しかし、これがなかなか思うようにいかない。私のハンダごてでは、熱が基板に拡散し、ハンダがうまく溶けない。仕方なく、小型のニッパー、特殊なカッターなど種々の道具を駆使して何とか取り外すことができた。
図-16

3.交換用のインダクタは元のものより一回り大きく、厚みもあるため、基板によっては取り付けがかなり困難である。
このTX/64Hもインダクタの直ぐ横にパーツがあり、しかも、上方にヒートシンクがあるため、高さにも制約がある。
何度かハンダを付け直し、ようやく取り付けに成功した。成功したというよりも、何とかくっつけた、というのが相応しいかもしれない(図-17)。
何度かハンダを付け直し、ようやく取り付けに成功した。成功したというよりも、何とかくっつけた、というのが相応しいかもしれない(図-17)。
図-17

4.ACアダプタで電源オン。Windowsが起動した。しばらく様子を見ていたが、再起動しないようである。
ところが、エクスペリエンスのスコアを更新したところ、CPUパフォーマンスの評価にさしかかったところで、電源が落ち、再起動がかかってしまった。
嗚呼、何ということか。これでも駄目なのか。これまでにかけたきた時間とお金と労力が全て不意になってしまうのか。
ACアダプタを容量の大きなものに替えると、再起動しなくなったという例がウェブにあったので、4.5Aのものを使ってみたが、無駄であった。
嗚呼、何ということか。これでも駄目なのか。これまでにかけたきた時間とお金と労力が全て不意になってしまうのか。
ACアダプタを容量の大きなものに替えると、再起動しなくなったという例がウェブにあったので、4.5Aのものを使ってみたが、無駄であった。
5.悲嘆に暮れかかったところで、これまで何度かプロードライザ交換に関する記事を読ませてもらっていた
「ひでのブログ」(http://hidekyan.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/dynabook-ac-feb.html)の記事の中に「CPU の省電力制御をソフト的にキャンセルすれば、パルス幅を一定に保つことが出来て、リセットの憂き目に遭わないかも知れない」云々という文章があったことを思い出した。
電源オプションで「プロセッサの電源管理」の「最小のプロセッサの状態」や「最大のプロセッサの状態」の%をいろいろ変えてみたが、再起動に陥るタイミングが変わる程度の効果しかない。
藁にもすがる思いで、電源を入れた直後に「F2」を押し、BIOSの設定に入って、「CPUパフォーマンス」の項目を「Dynamic(Dynamically Switchable)」から「Always Low」に変更してみる。
ここまでしてようやく何とかCPUに負荷がかかっても再起動には陥らなくなった。
しかし、再起動しなくなったのはよいが、この「Always Low」ではPCの動作が鈍すぎる。CPU-Zで見ると、この設定ではCPUの動作周波数は0.80GHzに固定されている。P8400の周波数は最大2.26GHzであるから、これではあまりにも情けない。
因みに、CPUの動作周波数が0.80GHzに固定されている場合であっても、エクスペリエンスのプロセッサのスコアは「5.2」と「Dynamic」設定の場合と同じであり、エクスペリエンス・スコアはCPUのその時点の処理能力を忠実に反映するものではないようである。
電源オプションで「プロセッサの電源管理」の「最小のプロセッサの状態」や「最大のプロセッサの状態」の%をいろいろ変えてみたが、再起動に陥るタイミングが変わる程度の効果しかない。
藁にもすがる思いで、電源を入れた直後に「F2」を押し、BIOSの設定に入って、「CPUパフォーマンス」の項目を「Dynamic(Dynamically Switchable)」から「Always Low」に変更してみる。
ここまでしてようやく何とかCPUに負荷がかかっても再起動には陥らなくなった。
しかし、再起動しなくなったのはよいが、この「Always Low」ではPCの動作が鈍すぎる。CPU-Zで見ると、この設定ではCPUの動作周波数は0.80GHzに固定されている。P8400の周波数は最大2.26GHzであるから、これではあまりにも情けない。
因みに、CPUの動作周波数が0.80GHzに固定されている場合であっても、エクスペリエンスのプロセッサのスコアは「5.2」と「Dynamic」設定の場合と同じであり、エクスペリエンス・スコアはCPUのその時点の処理能力を忠実に反映するものではないようである。
6.そこで、「Always Low」のままで、ひよひよさんのCrystalCPUIDの「Multiplier Management」を使って、再起動に陥ら
ない程度にまで倍率を上げてみることにした。
種々試した結果、以下の設定であれば、何とか再起動には陥らないようである(図-18)。
種々試した結果、以下の設定であれば、何とか再起動には陥らないようである(図-18)。
図-18

特に高機能・高性能のPCを必要としない娘の用途からすると、P8400が最大1.86GHzで動作するPCであれば、さほど不満は生じないであろう。娘が現に使っているノートPCのCeleronに比べれば、約3.7倍ほどの処理能力があるのだから、これでとりあえずは許してもらうことにする。
六、ほかに手はあるが…
なぜ、ここまでしてもなお完全に改善させることができないのか。
おそらく、
プロードライザが、真正な良品でない可能性があること、
そのハンダ付けが不完全であること、
純正のインダクタを取り外すために、ハンダごてを長時間にわたって何度も基板に当てたことにより、その付近の基板上の部品が熱による劣化を生じているおそれがあること、
等が原因として考えられる。
交換したプロードライザの不良が原因であるならば、しかも良質なプロードライザを新たに入手することが困難であるとするならば、他のコンデンサを代替品として修繕することも可能であるらしい。ウェブにはタンタル固体電解コンデンサ(330μF 2.5V)を4個、プロードライザの替わりに取り付けて症状を改善させた例がいくつか見られる。これらをインターネットで購入することも可能である。
改めてプロードライザをタンタル固体電解コンデンサに付け替えることにより、完全に修復させうる可能性は、確かにある。が、しかしながら、もはや修理への意欲が萎えてしまった。ここ1か月以上夜な夜な、dybabookをいったい何度分解し、組み立て直したであろうか。たまたま手に入った中古のノートPCである。もうここら辺で勘弁して頂くことにする。
この一文が、2007年から2009年にかけて製造された東芝のdynabookに多発する、ACアダプタ使用時に再起動を繰り返すという症状から自らの手でdynabookを救出したいと思い立った方の一助になれば、取り立てて新しい情報を提供している訳ではないが、幸いである。
【追記】:七、やっぱりタンタルコンデンサに交換
やはりこのままでは、どうにも居心地が悪い。姉のdynabookの処理能力が弟のdynabookのそれより劣るというのもかわいそうである。PC自作オタクの意地もある。
タンタル固体電解コンデンサ(330μF 2.5V)を4個をウェブショップで購入。プロードライザを取り除き、ハンダ吸取線で余分なハンダを丁寧に取り除く。極性を間違えないように外側をプラスにし内側をマイナスにして取り付けなければならないが、なにせ基板の接着部の両極間の幅が狭いのでタンタルコンデンサを斜めに取り付けざるをえない。銅板等を間にかませて平行に取り付ける方法もあるようだが(図-19:「我楽多苑」http://garakutaen.sakura.ne.jp/otherpc/RefAX55D.htmlより)、私の技量では困難が伴う。通常は、図-20(「パソコンショップLUX-修理手記」http://pclux0821.com/syuuri.htmlより)のようにタンタルコンデンサを左右それぞれ同じ向きに取り付けるか、あるいはひし形に取り付けるようである。私は後者の形にした(図-21)。
図-19 図-20 図-21



基板側とコンデンサ側それぞれにハンダを付け、ハンダごてを基板側の一方の極に当てコンデンサを付けた後直ぐに他方の極のハンダを溶かして接着させるらしい。このタンタルコンデンサもまた非常に熱に弱いとのことなので、一瞬でことは済ませなければならない。これに失敗すれば、娘に新しいノートPCを買わざるをえない。ハンダ下手の私には尋常ならざる緊張を強いられる作業であった。
組み立て直して、電源投入。CPUに負荷をかけるためベンチマークを行ってみるが、電源は落ちない。数時間使用してみても再起動はかからない。ついにようやく、このTX/64Hの蘇生に成功。長い道のりであったが、それ故の達成感を味わっているところである。
結論として、このよう症状のdynabookの修理において私のような悲惨な目に会わないためには迷わず、インダクタを交換するか、又はプロードライザをタンタルコンデンサに交換するか、いずれかの方法をとるのがよいということになる。 (2014.11.12)