WDのHDDの不調とRMAとロード/アンロードサイクル
一、HDDに異常
幸運にも、ここ2年ほど私が使っているHDDに取り立てて問題が生ずることはなかった。
1、4台にセクタの異常
ところが、この1か月の間に4台のHDDに問題が発生した。1台は外付け、3台は内蔵のHDDである。いずれも、S.M.A.R.T.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology、以下SMARTと表示)情報の「代替(だいたい)処理保留中のセクタ数」がカウントされ始めたのである。特に、内蔵3台は、2日の間に立て続けにこの症状が起こったので、このようなことを発生させるウイルスにでも感染したのでは、と慌てた。
発生当初のものではないが、それらのSMART情報をCrystalDiskInfoにて示しておく。御覧のように4台すべてWestern Digital(ウエスタンデジタル、以下WDと略す)製である。日立(HGST)やSeagateも使っているが、最近はもっぱらWDをひいきにしているからであろうか。図-1は、当初「代替処理保留中のセクタ」が検出されていたが、その後「回復不可能セクタ」のみが検出されるようになったものである。他も、最初は「代替処理保留中のセクタ数」にだけ値が記録されていたが、その後「回復不可能セクタ数」にも記録され始めたのである。「生の値」は10進数で表示してある。
図-1 図-2

図-3 図-4

2、データ救出
先ずは、データの救出である。4台ともOSがインストールされているHDDではなかったので、データはコピー・貼り付けで別のHDDに写し取ってみた。2台(図-1と図-2)は問題なくコピーすることができたが、他の2台(図-3と図-4)は、データの一部をコピーすることはできなかった。その際、以下のようなエラーがメッセージ・ボックスに表示された(図-5)。異常が生じたHDD全体を一度にバックアップしようとすると、このようにエラーでコピーが停止してしまうことがあるので、手間ではあるが、小分けにしてコピーする。エラーが出たら、さらにデータを細分し、可能な限りデータを救い出していく。
図-5

その内1台(図-3)は、別にバックアップをとっていたので問題はなかったが、もう1台(図-4)は、バックアップ先として使用していたHDDであり、データが無事であった1台(図-1)がそのバックアップの対象であった。こんなことがあるのである。バックアップ対象のHDDとそのバックアップ先のHDDが、ほぼ時を同じくして不調に陥ることなど、起こりえないことではないにしろ、まさか我が身に降りかかるとは思ってもみないものである。運良く、現データが無事であったので事なきを得たが、毎日バックアップをとり、2~3か月間は保存することにしているデータの内、数日分のバックアップが失われた。
やはり、大事なデータは、二重三重にバックアップしておくに越したことはない。
さらに、注意すべき点は、SMART情報にセクタの異常が出た場合、直ぐにディスクの表面テストを行わず、速やかに必要なデータの救出を行うということである。万が一、ディスクの表面に物理的な損傷が生じていた場合、ディスク全面に渡ってテストを行うことで、損傷が拡大してしまうことがあるとされているからである。大切なデータはまだ傷付いていないかもしれず、それだけを読み取りに行った方がより多くのデータを救い出せる可能性は高いであろう。
二、新品交換とRMAの手続
1、Black(1TB)、Red(2TB)、Green(4TB)購入
とまれ、新品と交換である。3台はRMA(Return Merchandise Authorization、返品保証)の保証期間を過ぎていたので、改めて購入。少し割高ではなるが、耐久性等を考慮して、5年保証のWD BlackのWD1003FZEX(1TB)、3年保証でMTBF(Mean time between failures、平均故障間隔)1,000,000時間のWD RedのWD20EFRX(2TB)、そしてWD Greenではあるが大容量を使ってみようと思い、WD40EZRX(4TB)を選んだ。
因みに、新規HDDにお決まりのCrystalDiskMarkを実行して、BlackのWD1003FZEXの速さに驚かされた(図-6)。
図-6

これはHDD最速と謳われるWDのVelociRaptorに肉薄する値であろう。Raptorとの価格差を考えると、Blackの健闘を讃えるべきである。調べると、近時WDからHGSTの施設を一部買い受けた東芝が製造している3.5インチHDDも、シーケンシャルの読み書き速度がこのBlackに比肩するらしい。但し、安価であるため、耐久性に難があるようである。
常時出し入れをするデータを保存しておくHDDとしては、保証、転送速度、価格を勘案すれば、WD Blackが最適ではないかと思う。
2、WDのRMA手続
さて、辛うじてRMAの保証期間内であった1台が、WD5000AZRXである。早速、RMAの手続をとる。RMAの手続に関しては、各ベンダーのサイトに説明があり、幾つかブログにも解説がなされているが、多くは海外へ送るため少し面倒なことがあるので、WDの場合について気付いた点に触れておく。
(1) ユーザ登録
(2) 製品登録
(3) RMA作成
(4) HDD梱包
(5) RMA発送方法
三、不良セクタ
1、FromHDDtoSSDによる検査
ところで、データを写し終えたこれら不良HDD3台の処遇である。取り敢えず、セクタの状態を詳しく調べるために、FromHDDtoSSDのVer2.1を使った。これは、既に30万ダウンロードされているというから、ご存知の方も多いだろうが、HDDを検査し、監視するソフトとして極めて優れており、ライセンスを購入すると、より詳細で高速な統計スキャンやデータ復旧機能等を利用することが可能となる。フリーエディションでも完全スキャンなどの基本的な機能は使うことができる。この完全スキャンを3台に実施してみた。
2、完全スキャン1|WD20EZRX:要交換
先ず、「代替処理保留中のセクタ数」の「生の値」があっという間に数百(10進数、以下同様)に達し、一部のデータを救出することができなかった図-4のWD Green、WD20EZRXに完全スキャンを行った。御覧のような結果となった(図-8)。一見、「良好」の緑で埋め尽くされているようだが、先頭のブロックは読込不能の黄色であり、全体的に読込が不安定となっている。FromHDDtoSSDの総合評価は、「完全スキャン(全セクタスキャン)の結果、このディスクは壊れていると判断いたします。すぐにデータのバックアップおよび、交換が必要です。」との判断。「回復不可能セクタ数」も「代替処理保留中のセクタ数」と同数の「2171」となり、使用不能が確定した。
図-8

3、完全スキャン2|WD20EZRX:良好
次に、「代替処理保留中のセクタ数」の「生の値」が「1」に過ぎなかった図-2のもう一つのWD Greenである。データもすべてコピーすることができ、無事だったWD20EZRXである。但し、FromHDDtoSSDの完全スキャンは時間がかかり、図-9にあるように上記のスキャンは5時間を超えたので、GA-EP45-UD3RにCore2 QuadのQ8300を載せてある三番手のWindowsXP機で行った。その結果は、6時間近くかかったが、図-9のように問題のない良好なものと出た。「経年劣化計」も「新品100」と判断された。しかし、現在のSMARTは、「代替処理保留中のセクタ数」の「生の値」は「6」に増え、「回復不可能セクタ数」のそれは「8」となっている。
図-9

4、完全スキャン3|WD10EALS:異常
最後に、WD10EALS、Caviar Blueと呼ばれていたものである。こちらは、「代替処理保留中のセクタ数」は400を超え、既に「回復不可能セクタ数」も300に達していた。完全スキャンなど無駄なような気もするが、試しに実行してみた。だが、途中でスキャンが停止し、FromHDDtoSSDが反応しなくなった。仕方なく、タスクマネージャーを起動して強制的に終了させた。
その後、これを書くために、Windows7機の64ビット版で再び完全スキャンを試みた。しかし、やはり、45%に差し掛かったあたりから「異常なセクタを検出」し、「ステータス」の「簡易判断不可のセクタを検出->詳細チェック中」の表示と「正常->スキャン作業を継続中です」の表示が、目視では判別できないほど高速で交互に繰り返され、キャプチャしてようやくその表示が判読できた。ログの表示部分も、膨大なログが驚異的な速さで記録されているようで、表示が追いつかず、単に高速で明滅しているだけの状態となり、ほとんどスキャンが進行しなくなった(図-10)。
図-10

しばらく様子を見ていたが、使用中のメモリが約3GBからみるみる14GBにまで増え、CPUの12スレッド中、2スレッドだけが稼働率95%前後に達したままとなり、CPUの全コアの温度は61~66℃まで上がった(追記:水冷CPUクーラーのラジエターに埃が溜まっていたために、これ程の高温になっていた。掃除後は同室温、同程度の稼働で55℃前後となった。怠慢反省)。「強制終了」させようとしたが、なかなか反応せず、タスクマネージャーで「タスクの終了」を試みたが、応答はなく、止むなくそのままログオフした。
これを使用するのは、もはや危険であろう。ただ、先頭から400GBあたりまでは正常に近い状態のようなので、そこでパーティションを切って、危ない怪しげなテストなどに使うことにする。
5、セクタ異常発生を如何に理解すべきか
さて、これら4台のセクタの異常をどう理解したらよいのであろうか。いずれも、先ず「代替処理保留中のセクタ数」がカウントされ始め、その後「代替処理済のセクタ数」はカウントされることなく、その多くは「回復不可能セクタ数」となって現れた。いつものことながら、セクタの異常については理解し難いことが多々ある。
不良セクタの処理がどのようなプロセスでなされるかは、「ハードディスク大量搭載実験研究サイト ハードディスク番長」の「不良セクタ・不良ブロックとはなにか」や、「HDD NAVI」の『HDDトラブルの対応法 「不良セクター」「不良クラスター」の確認と対応(2/2)』等のサイトに解説がなされているが、今回の場合をどう解すべきか。
いずれのHDDにも代替処理済となったセクタが一つも記録されていないのである。問題となったセクタに対し何度か読み取りが行われるも、結局一度も読み取りに成功しなかったということなのか。4台すべてがそうだったいうことなのであろうか。偶然にしては、釈然としないところではあるが、SMARTに関しては、ベンダーによって検出する項目や値の算出方法に差異があるようなので、WD特有の表れという面もあろう。もちろん、SMARTはHDD内部の一部の情報を取り出しているに過ぎず、表れた数値が類似しているとしても、内部で起こっていることが類似しているとは限らない。三者三様の完全スキャンの結果にもそれは表れている。
とはいうものの、このように蓋を開けて内部を見たところで、この美しい鏡面仕上げの磁性体の表面で何が起こっているのか判るはずもない(図-11)。
図-11(蓋を開けてみる) 図-12(電源を入れてみる)

これは、完全に使用不可能となったWD20EZRXの内部である。2TBとなるプラッター3枚をアクチュエータのアーム4本の先端に取り付けられたヘッドが挟み込むようになっているのが見える。それにしても、まばゆいばかりのディスクの平滑さのみならず、ディスクを手で回転させてみると、スピンドルモータの流体動圧軸受の驚異の滑らかさが、素人ながら判ったような気がしてくる。このむき出しの状態で電源を入れると数秒間だけ、音も揺れも遊びもなく、静止していると見まがうほど静かに回転するディスクを眺め、触れることができる(図-12)。その後は、SATAケーブルを挿していないためか、回転は停止する。HDDスピンドルモータ用軸受の80%のシェアを占めるとされる日本電産の技術に改めて敬意を表したい。
閑話休題。HDDの通常の使用において、販売店の保証期間ないしベンダーのRMA保証期間内である限り、セクタに関する異常がSMARTに1つでも記録された場合には、無償交換されることからすれば、原則としてセクタの異常が1つでも検出されたHDDは、もはや安全に使用することは困難である、と理解すべきであろう。従って、その後長期にわたって問題なく使用できる場合もあるが、それはあくまで僥倖に過ぎないと考えるのが妥当であろう。
だとすれば、完全スキャンで正常と出た図-2のWD20EZRXであっても、メイン機での常用は避け、Secure Eraseを施して一時的なデータの保管などに使用するのが賢明ということになる。
四、ロード/アンロードサイクル回数
1、WDのロード/アンロードサイクル回数の異常増加
上記のSMART情報を見て、ふと気になったことがある。「ロード/アンロードサイクル回数」である。使用時間はさほど変わらないにもかかわらず、2台が140万回を超えており、他の2台の990回や34058回との差があり過ぎる。他の正常なHDDの中にも約136万回のものや、159万回を超えているものもあった。全てWDのHDDである。
100万を超えていたWDの平均は、約374回/時、約6.2回/分であった。その他のWDは、約0.3回/時程度であり、多いものでも約10回/時であった。驚いたのは、今回購入したWD40EZRXである。使用開始1時間で1000回を超えたのである。日立は、約0.3~0.6回/時ほどであり、SeagateのHDDは少し古く、「ロード/アンロードサイクル回数」の項目はSMARTにない。WDのHDDは、「ロード/アンロードサイクル回数」が10回/時以下の個体と、300回/時を超える個体とおよそ二分されており、300回/時を超えるという状態は、尋常とは思われない。この点に問題はないのであろうか。
WDのサイトにあるHDDの仕様書には、「信頼性(Reliability)」という項目の「ロード/アンロードサイクル」に「300,000」ないし「600,000」と記載されている。他のベンダーのHDDもそのデータシートには概ね30万ないし60万と書かれている。その範囲内であれば、安心して使用できるという意味であろう。となると、130万~150万という値は、明らかにその範囲を超えていることになる。問題となっているWD Greenは、2年保証で30万であり、当該HDDが約2年、約3800時間使用していることから、約79回/時が、WDが信頼性を保証する値と考えることもできる。WD Redの3年保証で60万の場合、使用時間を仮に1日5時間とすると、1年間で1825時間、3年で5475時間となり、約110回/時となる。年間使用時間をどの程度と考えるかによるが、WDが想定するロード/アンロードサイクルの最大値はおよそ100回/時前後といえそうである。従って、100回/時を超えるロード/アンロードが起こっている場合は、異常であると判断して差し支えないであろう。
2、原因と問題点
その原因は、WDが2008年頃から導入を始めたIntelliParkという省電力機能が関係しているとされる。これは、アイドル時に磁気ヘッドをディスクの外周の外側に設置されたランプに退避させることによって(この退避方式を「ロード/アンロード」という)、ディスク表面とヘッドの接触による損傷を防止し、消費電力を抑えようとする機能とされる("WD AV-GP Series Disti Spec Sheet"、"WD Lowers Power Consumption, Further Cooling and Quieting Operation for Demanding Audio and Video Markets")。この機能が、ユーティリティ、OS、アプリケーション等によってはロード/アンロードを頻発させる場合があると説明されている("The S.M.A.R.T Attribute 193 Load/Unload counter keeps increasing on a SATA 2 hard drive")。
この問題はWD Communityにも盛んに投稿され、WD側もこの現象を"The S.M.A.R.T Attribute 193 Load/Unload counter continue to increase for the WD RE2-GP SATA II hard drives"というKnowledge Baseで「this symptom(この症状)」と表現しており、異常であるという認識は持っているようである。しかし、前掲のKnowledge Baseでは、"drive has been validated to 1 million load/unload cycles without issue"(「ドライブは100万回のロード/アンロードサイクルまで問題ないことは実証されている」)とも述べている。
いずれにしろ、機械的なアクチュエータにとって劣化を防ぐという意味では、ロード/アンロードの動作が少ないに越したことはない。また、絶え間ないロード/アンロードの繰り返しは、アクセスタイムの悪化を招く恐れがあるとの懸念もある。だとすれば、この症状は改善しておくべきであろう。
3、改善方法
改善策については、ウェブ上に種々挙っているが、上記Knowledge Baseに示されているように、"Idle3 Timer"を最大にするのが有効であろう。IntelliPark機能を効果的に発揮させるためにWDのHDDに実装されているIdle3 Timerを、wdidle3.exeというユーティリティを使って、初期値の8秒から最大の300秒に変更するのである。
WDのサイト("Downloads WD RE2-GP")から"wdidle3_1_05.zip"というファイルをダウンロードする。これを解凍すると、wdidle3.exeとwdidle3.txtに展開される。wdidle3.txtには、wdidle3.exeの機能とコマンドについて説明がなされている。wdidle3のバージョンは、1.05となっている。不明な点があれば、これをお読み下さい。
以前は、wdidle3.exeはWDの公式サイトに公開されていなかった。私も、数年前に初めてIntelliPark搭載のHDDを購入したとき、バージョン1.03を他のサイトからダウンロードし、使ったことがあった。
このwdidle3.exeファイルを、「MS-DOSの起動ディスク」にフォーマットしたフロッピーディスクにコピー&ペーストし、再起動して、Boot MenuでFDD(Floppy Disk Drive)を選択。
A:\>と表示されたところで、現在の状態を見るため、
「wdidle3 /R」と入力し、Enterを押下する(RはReportの頭文字であろう)。
WDのドライブならば、
Model : WD-WD20EZRX-00C0B0
Serial : WD-WCCXXXXXXXXX
Idle3 Timer is enabled and set to 8.000 seconds.
WD以外のドライブならば、
Model : ST31000333AS
Serial : XXXXXXXX
This is not a WD disk drive.
と、接続されている全ドライブにつき、現在のIdle3 Timerの状況が表示される。
初期値の8秒となっているはずである。
これを最大値300秒にするには、
「wdidle3 /S300」と入力する(SはSetの頭文字であろう)。
その結果が、Configure Idle3.以下に、
Idle3 Timer is enabled and set to 300 seconds (5.0 minutes).
と表示される。
これは、接続してある全てのWDのHDDに適用されるので、設定を変更したくない場合には、切断しておく。
再起動で終了。
Idle3 Timerを不要だとして、無効にする(Disable)人もいる。「wdidle3 /D」とすればよい。
しかし、省電力機能がまったく働かなくなるので、WDは最大値に変更することを勧めている(前掲Knowledge Base)。
【※ なお、このように今でもフロッピーは有用である。当然ながら、我が自作機4台全てにはFDDが搭載されている。
FDDがない場合は、NGOHQ.COMのサイトからwdidle3.isoのイメージファイルをダウンロードし、CDに焼けばよい。
CDから起動後、
Enter new date (mm-dd-[cc]yy):_と表示されたところで、Enterを押下し、
Enter new time:_のところで、再びEnterを押下すると、
A:\>が現れる。
4、結果
結果は、上々である。どのHDDもロード/アンロードサイクルは数時間に1回程度となっている。但し、1台だけ、原因は不明だが、一時的に98回/時に達するHDDがあるが、変更後102時間の平均は約68回/時であり、変更前の約367回/時に比ぶれば許容できる範囲ではないかと考える。Idle3 Timerを敢えて無効にしなくとも、300秒に変更するだけで充分な効果が得られるであろう。
また、「ロード/アンロードサイクル回数」の異常な増加は、日立やSeagateのHDDにおいても見られるようである。それらの場合は、APM(Advanced Power Management)やStandby timerという機能をCrystalDiskInfoやhdparmというソフトを使って調整することで回避できるようである。これらの機能は、ATA/ATAPI Command Set(Technical Committee T13)という仕様に準拠したものである。しかし、WDのHDDは、APM機能に対応しておらず、独自のIntelliPowerやIntelliParkといった機能が実装されているため、上述のような方法をとることになる。Samsungでもこの現象があると、IntelのCommunities("HDD click (excessive load-unload cycles)")等で指摘されており、その原因はIRSTにあると疑われているようだが、真偽のほどは定かでない。
因みに、ATA/ATAPI Command Set - 2 (ACS-2)のDraft(Revision 7, June 22, 2011)を見ると、"7.20 IDLE IMMEDIATE"の解説の中に"7.20.2.2 Unload feature"という項目があり、「IDLE IMMEDIATEコマンドのアンロード機能は、可動性の読み書き用ヘッドを持つディバイスがそのヘッドを安全な位置に移動させることを可能にする。アンロード機能を伴うIDLE IMMEDIATEコマンドを受け取ると、ディバイスは、a) 先読みの作業が進行中ならば、その先読みを停止し、b) メディアへのキャッシュデータの書き込み作業が進行中ならば、その書き込みを停止し、c) ディバイスがヘッドをランプにアンロードする方式を実装している場合には、ヘッドをそのランプに退避させ、d) ディバイスがヘッドをメディア上の接地ゾーンにパークする方式を実装している場合には、ヘッドをその接地ゾーンに退避させ、e) Idleモードに移行することになる。」と説明されている。
また、ロード/アンロードの仕組みについては、HGSTのホワイトペーパー、"Ramp Load/Unload Technology in Hard Disk Drives" (November 2007)にその概要が記されている。
【追記】:
わずかだが、手持ちの2.5インチHDDの「ロード/アンロードサイクル回数」を確認してみた。WDが3台、東芝が1台。WDはそれぞれ、約11回/時、約32回/時、約160回/時、東芝は、約33回/時であった。ノートPC又はその外付けに利用している以上、省電力及びディスク保護の観点からある程度この回数が多いのは止むを得ないであろう。しかし、160回/時は少し多過ぎるので、APMの設定値を変更して対処する。2.5インチは、3.5インチと異なり、WDでもAPMに対応している。
CrystalDiskInfoの「機能」⇒「上級者向け機能」⇒「AAM/APM設定」で、対象とするHDDを選択し、「電源管理(APM)」の設定値をパフォーマンス側に変更すると、ロード/アンロードサイクルを減らすことができる。参考までに、最大値「FEh」にすると、約0.5回/時にまで減少した。各自の使用状況・環境に応じて、CrystalDiskInfoのサイトの「使い方」を参考に、適宜APMの値を調整してみて下さい。設定後は、「自動的に AAM/APM 設定を適用する」にチェックを入れ、初期値に戻らないようにすることを忘れずに。
幸運にも、ここ2年ほど私が使っているHDDに取り立てて問題が生ずることはなかった。
1、4台にセクタの異常
ところが、この1か月の間に4台のHDDに問題が発生した。1台は外付け、3台は内蔵のHDDである。いずれも、S.M.A.R.T.(Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technology、以下SMARTと表示)情報の「代替(だいたい)処理保留中のセクタ数」がカウントされ始めたのである。特に、内蔵3台は、2日の間に立て続けにこの症状が起こったので、このようなことを発生させるウイルスにでも感染したのでは、と慌てた。
発生当初のものではないが、それらのSMART情報をCrystalDiskInfoにて示しておく。御覧のように4台すべてWestern Digital(ウエスタンデジタル、以下WDと略す)製である。日立(HGST)やSeagateも使っているが、最近はもっぱらWDをひいきにしているからであろうか。図-1は、当初「代替処理保留中のセクタ」が検出されていたが、その後「回復不可能セクタ」のみが検出されるようになったものである。他も、最初は「代替処理保留中のセクタ数」にだけ値が記録されていたが、その後「回復不可能セクタ数」にも記録され始めたのである。「生の値」は10進数で表示してある。
図-1 図-2


図-3 図-4


2、データ救出
先ずは、データの救出である。4台ともOSがインストールされているHDDではなかったので、データはコピー・貼り付けで別のHDDに写し取ってみた。2台(図-1と図-2)は問題なくコピーすることができたが、他の2台(図-3と図-4)は、データの一部をコピーすることはできなかった。その際、以下のようなエラーがメッセージ・ボックスに表示された(図-5)。異常が生じたHDD全体を一度にバックアップしようとすると、このようにエラーでコピーが停止してしまうことがあるので、手間ではあるが、小分けにしてコピーする。エラーが出たら、さらにデータを細分し、可能な限りデータを救い出していく。
図-5

その内1台(図-3)は、別にバックアップをとっていたので問題はなかったが、もう1台(図-4)は、バックアップ先として使用していたHDDであり、データが無事であった1台(図-1)がそのバックアップの対象であった。こんなことがあるのである。バックアップ対象のHDDとそのバックアップ先のHDDが、ほぼ時を同じくして不調に陥ることなど、起こりえないことではないにしろ、まさか我が身に降りかかるとは思ってもみないものである。運良く、現データが無事であったので事なきを得たが、毎日バックアップをとり、2~3か月間は保存することにしているデータの内、数日分のバックアップが失われた。
やはり、大事なデータは、二重三重にバックアップしておくに越したことはない。
さらに、注意すべき点は、SMART情報にセクタの異常が出た場合、直ぐにディスクの表面テストを行わず、速やかに必要なデータの救出を行うということである。万が一、ディスクの表面に物理的な損傷が生じていた場合、ディスク全面に渡ってテストを行うことで、損傷が拡大してしまうことがあるとされているからである。大切なデータはまだ傷付いていないかもしれず、それだけを読み取りに行った方がより多くのデータを救い出せる可能性は高いであろう。
二、新品交換とRMAの手続
1、Black(1TB)、Red(2TB)、Green(4TB)購入
とまれ、新品と交換である。3台はRMA(Return Merchandise Authorization、返品保証)の保証期間を過ぎていたので、改めて購入。少し割高ではなるが、耐久性等を考慮して、5年保証のWD BlackのWD1003FZEX(1TB)、3年保証でMTBF(Mean time between failures、平均故障間隔)1,000,000時間のWD RedのWD20EFRX(2TB)、そしてWD Greenではあるが大容量を使ってみようと思い、WD40EZRX(4TB)を選んだ。
因みに、新規HDDにお決まりのCrystalDiskMarkを実行して、BlackのWD1003FZEXの速さに驚かされた(図-6)。
図-6

これはHDD最速と謳われるWDのVelociRaptorに肉薄する値であろう。Raptorとの価格差を考えると、Blackの健闘を讃えるべきである。調べると、近時WDからHGSTの施設を一部買い受けた東芝が製造している3.5インチHDDも、シーケンシャルの読み書き速度がこのBlackに比肩するらしい。但し、安価であるため、耐久性に難があるようである。
常時出し入れをするデータを保存しておくHDDとしては、保証、転送速度、価格を勘案すれば、WD Blackが最適ではないかと思う。
2、WDのRMA手続
さて、辛うじてRMAの保証期間内であった1台が、WD5000AZRXである。早速、RMAの手続をとる。RMAの手続に関しては、各ベンダーのサイトに説明があり、幾つかブログにも解説がなされているが、多くは海外へ送るため少し面倒なことがあるので、WDの場合について気付いた点に触れておく。
(1) ユーザ登録
先ず、WDサポートポータルにユーザ登録をする。言語は日本語を選択することができるが、RMAのサービスを利用するにはHDDを海外へ送らなければならないので、姓名はローマ字で入力した方が便利である。登録ページの最後にある「登録してWDのサービスとサポート調査を受けられるようにしてください。」には忘れずにチェックを入れておく。
(2) 製品登録
WDサポートポータルにログインし、「保証ステータスをチェックする。」をクリックして、製品のシリアルナンバーを入力すると、RMA保証の期間内か否かが示される。保証期間内であれば、"IN WARRANTY"、期限切れであれば、 "OUT OF WARRANTY"と表示される。そのままチェックを入れると製品の登録ができる。製品の登録をせずに「RMAの作成」をクリックすれば、RMA申請の手続に進むこともできるが、後々メールで問い合わせをする必要が生じた場合、そのHDDしかWDの製品を持っていないと、メールをすることができない。なぜなら、問い合わせメールをするには、製品を登録して「新しいサポートケースを作成」しなければならず、一旦RMAの作成が完了すると、その後はその製品を登録することができないからである。RMAは製品を登録してから作成することをお勧めする。
私の場合、RMA作成後に返送先の住所を変更する必要が生じ、それは問い合わせのメールで伝えることになっているが、製品登録をせずにRMA申請をしたため、サポートケースを作成することができず、別のHDDを登録して、サポートケースを作成し、その問い合わせメールを通じて知らせるほかなかったのである。
私の場合、RMA作成後に返送先の住所を変更する必要が生じ、それは問い合わせのメールで伝えることになっているが、製品登録をせずにRMA申請をしたため、サポートケースを作成することができず、別のHDDを登録して、サポートケースを作成し、その問い合わせメールを通じて知らせるほかなかったのである。
(3) RMA作成
次に、RMAの作成である。ログインしたWDサポートポータルのRMAのボタン又は「作成する」をクリックすると(ページ上部の「WDクイックリンク」から「RMAの作成」をクリックしても同じ)、「RMA(返品保証)を作成する。」ページが表示される。チェックした製品の「理由とコメントを返す」欄のドロップダウン・メニューを表示して該当する理由、例えば「不良セクタ」等を選択する。「その他」の理由を選択する場合は、下欄の「Enter Comment」に理由を一言書き入れる必要があるが、それ以外の理由の場合は不要であろう。通常「RMAオプション」は「標準RMA」にチェックが入っているであろうから、そのまま「続ける」をクリック。
配送先住所を入力するページとなる。海外へ送るため住所はローマ字で入力する必要がある。
例えば、「〒100-4321 東京都千代田区霞ヶ関3丁目4-5」ならば、上から順に、
住所ラベル:SHIP_TO_2015-XX-XX(その日の日付を入れておけばよい)
住所ライン1:4-5, Kasumigaseki 3-chome
住所ライン2:Chiyoda-ku
市:Tokyo
郵便番号:100-4321
と入力して、「続ける」をクリックする。
これでRMAの申請は完了である。登録してあるアドレスにRMA番号を知らせるメールが届くことになっている。
ログインしたWDサポートポータルのRMAの「履歴およびステータス」をクリックすると、作成されたRMAの履歴が表示される。なお、「アカウント設定」から入る「マイプロフィール」では、登録製品の確認、RMAやサポートケースの作成や履歴の確認等を行うことができる。
配送先住所を入力するページとなる。海外へ送るため住所はローマ字で入力する必要がある。
例えば、「〒100-4321 東京都千代田区霞ヶ関3丁目4-5」ならば、上から順に、
住所ラベル:SHIP_TO_2015-XX-XX(その日の日付を入れておけばよい)
住所ライン1:4-5, Kasumigaseki 3-chome
住所ライン2:Chiyoda-ku
市:Tokyo
郵便番号:100-4321
と入力して、「続ける」をクリックする。
これでRMAの申請は完了である。登録してあるアドレスにRMA番号を知らせるメールが届くことになっている。
ログインしたWDサポートポータルのRMAの「履歴およびステータス」をクリックすると、作成されたRMAの履歴が表示される。なお、「アカウント設定」から入る「マイプロフィール」では、登録製品の確認、RMAやサポートケースの作成や履歴の確認等を行うことができる。
(4) HDD梱包
RMA番号をクリックすると、現在のRMA処理の状況が示される。「View RMA Premailer」をクリックすると、「RMA (返却承認)手順指示情報」を確認することができる。そこに記載された指示に従って、HDDを梱包し、そのページを全て印刷して、署名欄と日付欄の2箇所に署名・記入して同梱する。
また、そのページにある「RMAラベルの印刷」をクリックして表示されるラベルを印刷して外装箱に貼付し(通常は、別途送付ラベルを書かなければならないので、小さいラベルでよい)、RMA番号を外装箱の3側面に太字で記載するよう指示されている。
また、そのページにある「RMAラベルの印刷」をクリックして表示されるラベルを印刷して外装箱に貼付し(通常は、別途送付ラベルを書かなければならないので、小さいラベルでよい)、RMA番号を外装箱の3側面に太字で記載するよう指示されている。
(5) RMA発送方法
今回は、マレーシアにあるTeleplanという会社に送ることになっていた。因みに、このTeleplanは、HP、Microsoft、IBM、Nokia、日立、東芝、WD、Seagate等の電子機器メーカーのアフターサービスを専門に請負う会社で、本社はオランダにあるという。
海外に物品を送るには、郵便によるのが簡便であろう。幾つか送付方法はあるようだが、EMS(国際スピード郵便、Express Mail Service)か小形包装物として航空便かエコノミー航空(SAL:Surface Air Lifted)便にする方法が、料金と日数の点から一般的であろう。その際、税関報告書CN22又はCN23の添付が必要とされる。
【因みに、Surface Air Lifted mailとは、陸路と空路を組み合わせて輸送する郵便らしいので、主に陸路使った普通郵便を指す"surface mail"と「空輸された」という意味の"air lifted"を組み合わせて名称としたのであろう。】
日本郵便のサイトによると、HDD、1個を総重量800gとしてマレーシアに送るとすれば、
● EMSの場合、料金、1520円、日数、3日
● 航空便(小形包装物)の場合、料金、1170円(国際書留付きは、1580円)、日数、9日
● SAL便(小形包装物)の場合、料金、720円(国際書留付きは、1130円)、日数、2週間前後
となる。
小形包装物として航空便ないしSAL便を利用する場合、国際書留郵便にしなければ、安上がりだが、追跡もできないし損害補償もない。また、小形包装物にすると、国際小包(Postal Parcel)ラベルが使えず、宛名等は外箱に直接記入しなければならないらしい。その場合、先述の印刷したRMAラベルは大きい方を貼付することになる。もちろん、税関報告書CN22への記入は必要。「RMA (返却承認)手順指示情報」には、「追跡可能な配送業者をご利用ください」とあるので、この方法は避けた方が無難であろう。
小形包装物を国際書留郵便にすれば、追跡も可能となり、損害補償も6000円まで付く。また、国際書留郵便ラベル(これには税関報告書CN22が付属している)を使うので、これに記入すれば、あとは郵便局員が処理してくれる。この場合、航空便にすると、料金はEMSより高くなり、しかも日数がかかるので、通常はSAL便を使うことになろう。日数はかかっても、料金を抑えつつ、安心も得たいという人に向いている。
EMS(国際スピード郵便)は、「国際郵便の中で最優先に」取り扱われるとされているので、最も安全に速く送ることができる。国際書留のSAL便と比べると料金は少し高いが、日数を考慮すると、決して割高とはいえないであろう。もちろん、追跡も可能であり、追加料金なしで、2万円まで損害が補償されるので、安心でもある。このEMSラベルには、税関報告書CN23が複写として2枚含まれているので、これに記入するだけで済むようになっている。
参考までに、EMSラベルの記入例を示しておく(図-7)。現在のラベルにある「日本円換算合計(円)」の欄が、例示したラベルには少し古いためないが、そこは概算で記入して構わないであろう。事前に上記の「RMA (返却承認)手順指示情報」にある、EMSラベル記入に必要な事項は印刷するなどして、郵便局に持参するとよい。国際書留郵便ラベルに記入する事項も、ほぼこれと同じである。
詳しくは、日本郵便のサイトを確認して下さい。
図-7

【※ 内蔵ハードディスク(Internal Hard [Disk] Drive)のHSコード(Harmonized System Code、輸出入統計品目番号・関税番号)は、税関の公式サイトの輸出統計品目表2015年版によると8471.70.300(「記憶装置」の「磁気ディスク装置」)であるが、マレーシアのJKDM HS Explorerで調べると、"Hard disk drives"は、8471.70.000(MJEPA、マレーシア日経済連携協定)となっている。HSコードは輸出先(相手国)のものを記載するとされているので、ここでは8471.70.000とする。なお、WDの「RMA手順指示情報」にあるHTS番号(Harmonized Tariff Schedule Number)は、米国独自の関税分類番号でほぼHSコードと一致しているとのことであるが(内蔵ドライブは、8471.70.4065となっている)、当然ながら日本とマレーシア間の通関手続には不要である。】
(6) 実際の配送日数
私も、EMSを利用して問題のHDDを送ったが、追跡を確認すると、発送2日後には、マレーシアのクアラルンプールの国際交換局に到着しており、Pulau PenangのTeleplanには、その4日後に届けられている。そして、翌日には、交換品が発送され、5日後には届いた。Teleplanからの返送には、FedEx ExpressのInternational Economyが利用され、国内はゆうパックが使われていた。さすが世界最大の航空貨物輸送会社である、EMSより1日速い配送である。ともあれ、発送後12日でRMA交換品を手にしたことになる。
なお、送られてくる交換品は、同一型番とは限らず、同程度の性能を有する他の型番となることもあり、リファビッシュされた製品(再生品)となる。また、それは、幸運にも、送付した製品より少し容量が大きくなることもある。
海外に物品を送るには、郵便によるのが簡便であろう。幾つか送付方法はあるようだが、EMS(国際スピード郵便、Express Mail Service)か小形包装物として航空便かエコノミー航空(SAL:Surface Air Lifted)便にする方法が、料金と日数の点から一般的であろう。その際、税関報告書CN22又はCN23の添付が必要とされる。
【因みに、Surface Air Lifted mailとは、陸路と空路を組み合わせて輸送する郵便らしいので、主に陸路使った普通郵便を指す"surface mail"と「空輸された」という意味の"air lifted"を組み合わせて名称としたのであろう。】
日本郵便のサイトによると、HDD、1個を総重量800gとしてマレーシアに送るとすれば、
● EMSの場合、料金、1520円、日数、3日
● 航空便(小形包装物)の場合、料金、1170円(国際書留付きは、1580円)、日数、9日
● SAL便(小形包装物)の場合、料金、720円(国際書留付きは、1130円)、日数、2週間前後
となる。
小形包装物として航空便ないしSAL便を利用する場合、国際書留郵便にしなければ、安上がりだが、追跡もできないし損害補償もない。また、小形包装物にすると、国際小包(Postal Parcel)ラベルが使えず、宛名等は外箱に直接記入しなければならないらしい。その場合、先述の印刷したRMAラベルは大きい方を貼付することになる。もちろん、税関報告書CN22への記入は必要。「RMA (返却承認)手順指示情報」には、「追跡可能な配送業者をご利用ください」とあるので、この方法は避けた方が無難であろう。
小形包装物を国際書留郵便にすれば、追跡も可能となり、損害補償も6000円まで付く。また、国際書留郵便ラベル(これには税関報告書CN22が付属している)を使うので、これに記入すれば、あとは郵便局員が処理してくれる。この場合、航空便にすると、料金はEMSより高くなり、しかも日数がかかるので、通常はSAL便を使うことになろう。日数はかかっても、料金を抑えつつ、安心も得たいという人に向いている。
EMS(国際スピード郵便)は、「国際郵便の中で最優先に」取り扱われるとされているので、最も安全に速く送ることができる。国際書留のSAL便と比べると料金は少し高いが、日数を考慮すると、決して割高とはいえないであろう。もちろん、追跡も可能であり、追加料金なしで、2万円まで損害が補償されるので、安心でもある。このEMSラベルには、税関報告書CN23が複写として2枚含まれているので、これに記入するだけで済むようになっている。
参考までに、EMSラベルの記入例を示しておく(図-7)。現在のラベルにある「日本円換算合計(円)」の欄が、例示したラベルには少し古いためないが、そこは概算で記入して構わないであろう。事前に上記の「RMA (返却承認)手順指示情報」にある、EMSラベル記入に必要な事項は印刷するなどして、郵便局に持参するとよい。国際書留郵便ラベルに記入する事項も、ほぼこれと同じである。
詳しくは、日本郵便のサイトを確認して下さい。
図-7

【※ 内蔵ハードディスク(Internal Hard [Disk] Drive)のHSコード(Harmonized System Code、輸出入統計品目番号・関税番号)は、税関の公式サイトの輸出統計品目表2015年版によると8471.70.300(「記憶装置」の「磁気ディスク装置」)であるが、マレーシアのJKDM HS Explorerで調べると、"Hard disk drives"は、8471.70.000(MJEPA、マレーシア日経済連携協定)となっている。HSコードは輸出先(相手国)のものを記載するとされているので、ここでは8471.70.000とする。なお、WDの「RMA手順指示情報」にあるHTS番号(Harmonized Tariff Schedule Number)は、米国独自の関税分類番号でほぼHSコードと一致しているとのことであるが(内蔵ドライブは、8471.70.4065となっている)、当然ながら日本とマレーシア間の通関手続には不要である。】
(6) 実際の配送日数
私も、EMSを利用して問題のHDDを送ったが、追跡を確認すると、発送2日後には、マレーシアのクアラルンプールの国際交換局に到着しており、Pulau PenangのTeleplanには、その4日後に届けられている。そして、翌日には、交換品が発送され、5日後には届いた。Teleplanからの返送には、FedEx ExpressのInternational Economyが利用され、国内はゆうパックが使われていた。さすが世界最大の航空貨物輸送会社である、EMSより1日速い配送である。ともあれ、発送後12日でRMA交換品を手にしたことになる。
なお、送られてくる交換品は、同一型番とは限らず、同程度の性能を有する他の型番となることもあり、リファビッシュされた製品(再生品)となる。また、それは、幸運にも、送付した製品より少し容量が大きくなることもある。
三、不良セクタ
1、FromHDDtoSSDによる検査
ところで、データを写し終えたこれら不良HDD3台の処遇である。取り敢えず、セクタの状態を詳しく調べるために、FromHDDtoSSDのVer2.1を使った。これは、既に30万ダウンロードされているというから、ご存知の方も多いだろうが、HDDを検査し、監視するソフトとして極めて優れており、ライセンスを購入すると、より詳細で高速な統計スキャンやデータ復旧機能等を利用することが可能となる。フリーエディションでも完全スキャンなどの基本的な機能は使うことができる。この完全スキャンを3台に実施してみた。
2、完全スキャン1|WD20EZRX:要交換
先ず、「代替処理保留中のセクタ数」の「生の値」があっという間に数百(10進数、以下同様)に達し、一部のデータを救出することができなかった図-4のWD Green、WD20EZRXに完全スキャンを行った。御覧のような結果となった(図-8)。一見、「良好」の緑で埋め尽くされているようだが、先頭のブロックは読込不能の黄色であり、全体的に読込が不安定となっている。FromHDDtoSSDの総合評価は、「完全スキャン(全セクタスキャン)の結果、このディスクは壊れていると判断いたします。すぐにデータのバックアップおよび、交換が必要です。」との判断。「回復不可能セクタ数」も「代替処理保留中のセクタ数」と同数の「2171」となり、使用不能が確定した。
図-8

3、完全スキャン2|WD20EZRX:良好
次に、「代替処理保留中のセクタ数」の「生の値」が「1」に過ぎなかった図-2のもう一つのWD Greenである。データもすべてコピーすることができ、無事だったWD20EZRXである。但し、FromHDDtoSSDの完全スキャンは時間がかかり、図-9にあるように上記のスキャンは5時間を超えたので、GA-EP45-UD3RにCore2 QuadのQ8300を載せてある三番手のWindowsXP機で行った。その結果は、6時間近くかかったが、図-9のように問題のない良好なものと出た。「経年劣化計」も「新品100」と判断された。しかし、現在のSMARTは、「代替処理保留中のセクタ数」の「生の値」は「6」に増え、「回復不可能セクタ数」のそれは「8」となっている。
図-9

4、完全スキャン3|WD10EALS:異常
最後に、WD10EALS、Caviar Blueと呼ばれていたものである。こちらは、「代替処理保留中のセクタ数」は400を超え、既に「回復不可能セクタ数」も300に達していた。完全スキャンなど無駄なような気もするが、試しに実行してみた。だが、途中でスキャンが停止し、FromHDDtoSSDが反応しなくなった。仕方なく、タスクマネージャーを起動して強制的に終了させた。
その後、これを書くために、Windows7機の64ビット版で再び完全スキャンを試みた。しかし、やはり、45%に差し掛かったあたりから「異常なセクタを検出」し、「ステータス」の「簡易判断不可のセクタを検出->詳細チェック中」の表示と「正常->スキャン作業を継続中です」の表示が、目視では判別できないほど高速で交互に繰り返され、キャプチャしてようやくその表示が判読できた。ログの表示部分も、膨大なログが驚異的な速さで記録されているようで、表示が追いつかず、単に高速で明滅しているだけの状態となり、ほとんどスキャンが進行しなくなった(図-10)。
図-10

しばらく様子を見ていたが、使用中のメモリが約3GBからみるみる14GBにまで増え、CPUの12スレッド中、2スレッドだけが稼働率95%前後に達したままとなり、CPUの全コアの温度は61~66℃まで上がった(追記:水冷CPUクーラーのラジエターに埃が溜まっていたために、これ程の高温になっていた。掃除後は同室温、同程度の稼働で55℃前後となった。怠慢反省)。「強制終了」させようとしたが、なかなか反応せず、タスクマネージャーで「タスクの終了」を試みたが、応答はなく、止むなくそのままログオフした。
これを使用するのは、もはや危険であろう。ただ、先頭から400GBあたりまでは正常に近い状態のようなので、そこでパーティションを切って、危ない怪しげなテストなどに使うことにする。
5、セクタ異常発生を如何に理解すべきか
さて、これら4台のセクタの異常をどう理解したらよいのであろうか。いずれも、先ず「代替処理保留中のセクタ数」がカウントされ始め、その後「代替処理済のセクタ数」はカウントされることなく、その多くは「回復不可能セクタ数」となって現れた。いつものことながら、セクタの異常については理解し難いことが多々ある。
不良セクタの処理がどのようなプロセスでなされるかは、「ハードディスク大量搭載実験研究サイト ハードディスク番長」の「不良セクタ・不良ブロックとはなにか」
いずれのHDDにも代替処理済となったセクタが一つも記録されていないのである。問題となったセクタに対し何度か読み取りが行われるも、結局一度も読み取りに成功しなかったということなのか。4台すべてがそうだったいうことなのであろうか。偶然にしては、釈然としないところではあるが、SMARTに関しては、ベンダーによって検出する項目や値の算出方法に差異があるようなので、WD特有の表れという面もあろう。もちろん、SMARTはHDD内部の一部の情報を取り出しているに過ぎず、表れた数値が類似しているとしても、内部で起こっていることが類似しているとは限らない。三者三様の完全スキャンの結果にもそれは表れている。
とはいうものの、このように蓋を開けて内部を見たところで、この美しい鏡面仕上げの磁性体の表面で何が起こっているのか判るはずもない(図-11)。
図-11(蓋を開けてみる) 図-12(電源を入れてみる)


これは、完全に使用不可能となったWD20EZRXの内部である。2TBとなるプラッター3枚をアクチュエータのアーム4本の先端に取り付けられたヘッドが挟み込むようになっているのが見える。それにしても、まばゆいばかりのディスクの平滑さのみならず、ディスクを手で回転させてみると、スピンドルモータの流体動圧軸受の驚異の滑らかさが、素人ながら判ったような気がしてくる。このむき出しの状態で電源を入れると数秒間だけ、音も揺れも遊びもなく、静止していると見まがうほど静かに回転するディスクを眺め、触れることができる(図-12)。その後は、SATAケーブルを挿していないためか、回転は停止する。HDDスピンドルモータ用軸受の80%のシェアを占めるとされる日本電産の技術に改めて敬意を表したい。
※【追記】
因みに、HDDにおけるデータ障害には、論理障害と物理障害があり、不良セクタは磁性体に生じる物理障害と考えられる。論理障害であれば、我々素人でも何とかソフトウェアの力を借りてデータを救い出すことが可能であるが、物理障害となると、専門の業者でなければデータ救出は困難とされている。
ところが、素人ながら、ヘッドやスピンドルモータなどの機械部分に不具合が生じた場合であっても、同一型番の正常なHDDを用意し、アームを交換したり、プラッターと基板を正常なモータのHDDに移し換えるなどして、データを救出するという荒技を行う猛者がいることに驚いた。もちろん、その作業はクリーンルームなどで行っているわけでないので、そのHDDを長期に運用することは難しいが、データを救い出すために一時的にHDDを復活させることはできるようである。
万が一のときには、試してみたいと考えている。その様子は動画サイトで見ることができる。興味のある方は、「HDD ヘッド交換」などと検索してみるとよい。(2016.12.25)
なお、ストレージのフォーマットについて不分明な点をあやふやなまま長年放置してきたが、ようやくその概略ではあるが、明確にすることができた。フォーマットに関して腑に落ちないことがあるという方は、「フォーマット、その1~物理フォーマット」及び「フォーマット、その2~論理フォーマット」をご一読ください。(2017.9.18)
因みに、HDDにおけるデータ障害には、論理障害と物理障害があり、不良セクタは磁性体に生じる物理障害と考えられる。論理障害であれば、我々素人でも何とかソフトウェアの力を借りてデータを救い出すことが可能であるが、物理障害となると、専門の業者でなければデータ救出は困難とされている。
ところが、素人ながら、ヘッドやスピンドルモータなどの機械部分に不具合が生じた場合であっても、同一型番の正常なHDDを用意し、アームを交換したり、プラッターと基板を正常なモータのHDDに移し換えるなどして、データを救出するという荒技を行う猛者がいることに驚いた。もちろん、その作業はクリーンルームなどで行っているわけでないので、そのHDDを長期に運用することは難しいが、データを救い出すために一時的にHDDを復活させることはできるようである。
万が一のときには、試してみたいと考えている。その様子は動画サイトで見ることができる。興味のある方は、「HDD ヘッド交換」などと検索してみるとよい。(2016.12.25)
なお、ストレージのフォーマットについて不分明な点をあやふやなまま長年放置してきたが、ようやくその概略ではあるが、明確にすることができた。フォーマットに関して腑に落ちないことがあるという方は、「フォーマット、その1~物理フォーマット」及び「フォーマット、その2~論理フォーマット」をご一読ください。(2017.9.18)
閑話休題。HDDの通常の使用において、販売店の保証期間ないしベンダーのRMA保証期間内である限り、セクタに関する異常がSMARTに1つでも記録された場合には、無償交換されることからすれば、原則としてセクタの異常が1つでも検出されたHDDは、もはや安全に使用することは困難である、と理解すべきであろう。従って、その後長期にわたって問題なく使用できる場合もあるが、それはあくまで僥倖に過ぎないと考えるのが妥当であろう。
だとすれば、完全スキャンで正常と出た図-2のWD20EZRXであっても、メイン機での常用は避け、Secure Eraseを施して一時的なデータの保管などに使用するのが賢明ということになる。
四、ロード/アンロードサイクル回数
1、WDのロード/アンロードサイクル回数の異常増加
上記のSMART情報を見て、ふと気になったことがある。「ロード/アンロードサイクル回数」である。使用時間はさほど変わらないにもかかわらず、2台が140万回を超えており、他の2台の990回や34058回との差があり過ぎる。他の正常なHDDの中にも約136万回のものや、159万回を超えているものもあった。全てWDのHDDである。
100万を超えていたWDの平均は、約374回/時、約6.2回/分であった。その他のWDは、約0.3回/時程度であり、多いものでも約10回/時であった。驚いたのは、今回購入したWD40EZRXである。使用開始1時間で1000回を超えたのである。日立は、約0.3~0.6回/時ほどであり、SeagateのHDDは少し古く、「ロード/アンロードサイクル回数」の項目はSMARTにない。WDのHDDは、「ロード/アンロードサイクル回数」が10回/時以下の個体と、300回/時を超える個体とおよそ二分されており、300回/時を超えるという状態は、尋常とは思われない。この点に問題はないのであろうか。
WDのサイトにあるHDDの仕様書には、「信頼性(Reliability)」という項目の「ロード/アンロードサイクル」に「300,000」ないし「600,000」と記載されている。他のベンダーのHDDもそのデータシートには概ね30万ないし60万と書かれている。その範囲内であれば、安心して使用できるという意味であろう。となると、130万~150万という値は、明らかにその範囲を超えていることになる。問題となっているWD Greenは、2年保証で30万であり、当該HDDが約2年、約3800時間使用していることから、約79回/時が、WDが信頼性を保証する値と考えることもできる。WD Redの3年保証で60万の場合、使用時間を仮に1日5時間とすると、1年間で1825時間、3年で5475時間となり、約110回/時となる。年間使用時間をどの程度と考えるかによるが、WDが想定するロード/アンロードサイクルの最大値はおよそ100回/時前後といえそうである。従って、100回/時を超えるロード/アンロードが起こっている場合は、異常であると判断して差し支えないであろう。
2、原因と問題点
その原因は、WDが2008年頃から導入を始めたIntelliParkという省電力機能が関係しているとされる。これは、アイドル時に磁気ヘッドをディスクの外周の外側に設置されたランプに退避させることによって(この退避方式を「ロード/アンロード」という)、ディスク表面とヘッドの接触による損傷を防止し、消費電力を抑えようとする機能とされる("WD AV-GP Series Disti Spec Sheet"、"WD Lowers Power Consumption, Further Cooling and Quieting Operation for Demanding Audio and Video Markets")。この機能が、ユーティリティ、OS、アプリケーション等によってはロード/アンロードを頻発させる場合があると説明されている("The S.M.A.R.T Attribute 193 Load/Unload counter keeps increasing on a SATA 2 hard drive")。
この問題はWD Communityにも盛んに投稿され、WD側もこの現象を"The S.M.A.R.T Attribute 193 Load/Unload counter continue to increase for the WD RE2-GP SATA II hard drives"というKnowledge Baseで「this symptom(この症状)」と表現しており、異常であるという認識は持っているようである。しかし、前掲のKnowledge Baseでは、"drive has been validated to 1 million load/unload cycles without issue"(「ドライブは100万回のロード/アンロードサイクルまで問題ないことは実証されている」)とも述べている。
いずれにしろ、機械的なアクチュエータにとって劣化を防ぐという意味では、ロード/アンロードの動作が少ないに越したことはない。また、絶え間ないロード/アンロードの繰り返しは、アクセスタイムの悪化を招く恐れがあるとの懸念もある。だとすれば、この症状は改善しておくべきであろう。
3、改善方法
改善策については、ウェブ上に種々挙っているが、上記Knowledge Baseに示されているように、"Idle3 Timer"を最大にするのが有効であろう。IntelliPark機能を効果的に発揮させるためにWDのHDDに実装されているIdle3 Timerを、wdidle3.exeというユーティリティを使って、初期値の8秒から最大の300秒に変更するのである。
WDのサイト("Downloads WD RE2-GP")から"wdidle3_1_05.zip"というファイルをダウンロードする。これを解凍すると、wdidle3.exeとwdidle3.txtに展開される。wdidle3.txtには、wdidle3.exeの機能とコマンドについて説明がなされている。wdidle3のバージョンは、1.05となっている。不明な点があれば、これをお読み下さい。
以前は、wdidle3.exeはWDの公式サイトに公開されていなかった。私も、数年前に初めてIntelliPark搭載のHDDを購入したとき、バージョン1.03を他のサイトからダウンロードし、使ったことがあった。
このwdidle3.exeファイルを、「MS-DOSの起動ディスク」にフォーマットしたフロッピーディスクにコピー&ペーストし、再起動して、Boot MenuでFDD(Floppy Disk Drive)を選択。
A:\>と表示されたところで、現在の状態を見るため、
「wdidle3 /R」と入力し、Enterを押下する(RはReportの頭文字であろう)。
WDのドライブならば、
Model : WD-WD20EZRX-00C0B0
Serial : WD-WCCXXXXXXXXX
Idle3 Timer is enabled and set to 8.000 seconds.
WD以外のドライブならば、
Model : ST31000333AS
Serial : XXXXXXXX
This is not a WD disk drive.
と、接続されている全ドライブにつき、現在のIdle3 Timerの状況が表示される。
初期値の8秒となっているはずである。
これを最大値300秒にするには、
「wdidle3 /S300」と入力する(SはSetの頭文字であろう)。
その結果が、Configure Idle3.以下に、
Idle3 Timer is enabled and set to 300 seconds (5.0 minutes).
と表示される。
これは、接続してある全てのWDのHDDに適用されるので、設定を変更したくない場合には、切断しておく。
再起動で終了。
Idle3 Timerを不要だとして、無効にする(Disable)人もいる。「wdidle3 /D」とすればよい。
しかし、省電力機能がまったく働かなくなるので、WDは最大値に変更することを勧めている(前掲Knowledge Base)。
【※ なお、このように今でもフロッピーは有用である。当然ながら、我が自作機4台全てにはFDDが搭載されている。
Windows 10 Technial PreviewにおいてもBuild 9926からフロッピー・ドライバが実装されており(「Windows 10 Technical Previewを入れる」)、Microsoftの姿勢を評価したい。是非、外付けのFDDでも結構ですから、1台はお持ちになることをお勧めします。】
FDDがない場合は、NGOHQ.COMのサイトからwdidle3.isoのイメージファイルをダウンロードし、CDに焼けばよい。
CDから起動後、
Enter new date (mm-dd-[cc]yy):_と表示されたところで、Enterを押下し、
Enter new time:_のところで、再びEnterを押下すると、
A:\>が現れる。
4、結果
結果は、上々である。どのHDDもロード/アンロードサイクルは数時間に1回程度となっている。但し、1台だけ、原因は不明だが、一時的に98回/時に達するHDDがあるが、変更後102時間の平均は約68回/時であり、変更前の約367回/時に比ぶれば許容できる範囲ではないかと考える。Idle3 Timerを敢えて無効にしなくとも、300秒に変更するだけで充分な効果が得られるであろう。
また、「ロード/アンロードサイクル回数」の異常な増加は、日立やSeagateのHDDにおいても見られるようである。それらの場合は、APM(Advanced Power Management)やStandby timerという機能をCrystalDiskInfoやhdparmというソフトを使って調整することで回避できるようである。これらの機能は、ATA/ATAPI Command Set(Technical Committee T13)という仕様に準拠したものである。しかし、WDのHDDは、APM機能に対応しておらず、独自のIntelliPowerやIntelliParkといった機能が実装されているため、上述のような方法をとることになる。Samsungでもこの現象があると、IntelのCommunities("HDD click (excessive load-unload cycles)")等で指摘されており、その原因はIRSTにあると疑われているようだが、真偽のほどは定かでない。
因みに、ATA/ATAPI Command Set - 2 (ACS-2)のDraft(Revision 7, June 22, 2011)を見ると、"7.20 IDLE IMMEDIATE"の解説の中に"7.20.2.2 Unload feature"という項目があり、「IDLE IMMEDIATEコマンドのアンロード機能は、可動性の読み書き用ヘッドを持つディバイスがそのヘッドを安全な位置に移動させることを可能にする。アンロード機能を伴うIDLE IMMEDIATEコマンドを受け取ると、ディバイスは、a) 先読みの作業が進行中ならば、その先読みを停止し、b) メディアへのキャッシュデータの書き込み作業が進行中ならば、その書き込みを停止し、c) ディバイスがヘッドをランプにアンロードする方式を実装している場合には、ヘッドをそのランプに退避させ、d) ディバイスがヘッドをメディア上の接地ゾーンにパークする方式を実装している場合には、ヘッドをその接地ゾーンに退避させ、e) Idleモードに移行することになる。」と説明されている。
また、ロード/アンロードの仕組みについては、HGSTのホワイトペーパー、"Ramp Load/Unload Technology in Hard Disk Drives" (November 2007)にその概要が記されている。
【追記】:
わずかだが、手持ちの2.5インチHDDの「ロード/アンロードサイクル回数」を確認してみた。WDが3台、東芝が1台。WDはそれぞれ、約11回/時、約32回/時、約160回/時、東芝は、約33回/時であった。ノートPC又はその外付けに利用している以上、省電力及びディスク保護の観点からある程度この回数が多いのは止むを得ないであろう。しかし、160回/時は少し多過ぎるので、APMの設定値を変更して対処する。2.5インチは、3.5インチと異なり、WDでもAPMに対応している。
CrystalDiskInfoの「機能」⇒「上級者向け機能」⇒「AAM/APM設定」で、対象とするHDDを選択し、「電源管理(APM)」の設定値をパフォーマンス側に変更すると、ロード/アンロードサイクルを減らすことができる。参考までに、最大値「FEh」にすると、約0.5回/時にまで減少した。各自の使用状況・環境に応じて、CrystalDiskInfoのサイトの「使い方」を参考に、適宜APMの値を調整してみて下さい。設定後は、「自動的に AAM/APM 設定を適用する」にチェックを入れ、初期値に戻らないようにすることを忘れずに。