「初期化」について

 「初期化」という言葉が適切ではないところで用いられている場面をしばしば目にする。「初期化」という言葉が使われる場合、使う人によってその「初期」をどの時点に定めているかがまちまちで、意思の疎通に混乱を来たすことも少なくない。PCにおいて「初期化」を行ったが、期待とは異なる状態に立ち至り、慌てるという事態も時折、見受けられる。

 初期化(initialization)とは、文字通り、初期の(initial)状態にすることを意味する言葉だが、コンピュータに関して用いられるようになった言葉のようである。この言葉は、今日、様々な意味で使われているため、誤解や誤用を生みやすく、注意を要する。

 コンピュータに関する初期化という言葉は、大きく分けて二つの意味があるようである。ソフトウェアに関するものと、ハードウェアに関するものとがある。

●一、ソフトウェアにおける初期化

 ソフトウェアに関しては、主にプログラミングにおいて初期化という語が使用されている。

 Wikipediaの"Initialization (programming)"には、"In computer programming, initialization is the assignment of an initial value for a data object or variable. The manner in which initialization is performed depends on programming language, as well as type, storage class, etc., of an object to be initialized."(「コンピュータ・プログラミングにおいては、初期化とは、データオブジェクトや変数に対して初期値を割り当てることである。初期化が実行される方法は、初期化されるオブジェクトのタイプやストレージクラス等によってはもちろん、プログラミング言語によっても異なる。」)と説明されている。

 この場合、その性質上、初期化という語は、明確に定義されており、プログラミングを行う専門家ないしマニアによって用いられるため、誤解や誤用される恐れはなく、問題はない。問題なのは、ハードウェアに関してである。

●二、ハードウェアにおける初期化

 ハードウェアに関しては、この初期化という語は、多義的に用いられている。

◎1、PC等に電源を入れた直後、OSが各ディバイス(ディスプレイ、RAM等)を利用することを可能にするために、ファームウェア(BIOSないしUEFI)がいったんディバイスを初期状態にすることを指す。

 このファームウェアによるディバイスの初期化は、利用者が関与することはなく、自動で行われるものである。

 また、アプリケーション・ソフトウェアもその実行時に必要なディバイスを初期化する場合がある。

 【追記】:
 ところで、「BIOS/UEFIの初期化」という表現が使われることがある。

 この表現も多義的である。
◆ 一つは、CMOSクリアを指す場合である。

 CMOSとは、Complementary Metal-Oxide Semiconductor(相補型金属酸化膜半導体)のことであり、これを用いた回路や半導体チップを指すこともある。近時は、カメラのイメージセンサに用いられていることから、広く一般にも知られるようになった言葉であるが、コンピュータにおいては、BIOSの設定情報を保存するマザーボード上の不揮発性RAM(Non-Volatile RAM、NVRAM)を指す言葉として使われてきた。それは、Motorola社のMC146818に代表される、電源切断時に小型のバッテリ(ボタン電池等)によって電力が供給されることによって不揮発性を維持するCMOS SRAM(Static Random Access Memory)がそのメモリとして用いられたからだとされる(当時のMC146818Aのデータシートを見ると、冒頭のページに「CMOS」と大書されている)。そのため、CMOS RAMとも呼ばれる(参照:Wikipedia、「Nonvolatile BIOS memory」)。

 CMOSは、また、持続的に電力が供給されることから、システム時計、リアルタイムクロック(Real Time Clock、RTC)に時間を刻ませるためにも使用される。従って、RTC RAMとも表記され、CMOSクリアは、マザーボード上に「CLR_RTC」などと略記されることもある。

 このCMOSをクリアすれば、BIOS又はUEFIの設定情報は一旦消去されることになる。

 マザーボードメーカーやPC自作者は、このようにNVRAM内のBIOS/UEFIの設定情報を消去することを「CMOSクリア」と表現してきたのである。BIOS/UEFIの誤作動による不具合を解消するために、あるいはマザーボードを譲渡する場合に、CMOSクリアが行われる。

◆ もう一つは、BIOS又はUEFIの変更可能な設定事項を予め定められている初期の既定値(デフォルト値)に戻すことを指す。

 これは、通常BIOS/UEFIの設定画面から行うことができ、「Load Setup Defaults」、「Load Optimized Defaults」、「デフォルト値をロードする」などと表示される。

 これを実行すると、BIOS/UEFIの変更可能設定事項がデフォルト値に戻ることになる。

◆ これら二つの操作は、CMOS即ちNVRAM内の記憶情報に関するものであるが、両者の異同を理解する上で注意すべき点は、CMOSをクリアしようが、デフォルト値をロードしようが、BIOS/UEFIそのものが消失するわけでも、書き換えられるわけでもない、ということである。BIOS/UEFI自体は、マザーボード上のCMOSとは異なるFlash ROM(フラッシュメモリ、特にBIOS/UEFIが書き込まれたものをBIOS Chipとも)に保存されている。NVRAMには、あくまでその設定情報が記憶されているだけなのである。

※ 写真はBIOSTARのG31-M7から取り外したFlash ROM(BIOS Chip)である。DIL-8/DIP-8というICソケットに装着されるタイプのパッケージであり、ASUSやASRockのマザーボードに多く使われている。その他にPLCC-32やSOP-8/SOIC-8というタイプもあるが、後者は半田付けされるタイプでGIGABYTEやノートPCのマザーボードに主に使われている。(AMIC製 A25L040-F)
BIOS_Chip1 BIOS_Chip2 BIOS_Chip3

 CMOSがクリアされると、一旦、RTCの現在の時刻情報、BIOS/UEFIの設定情報、接続ディバイスの情報等が全て失われる。そして、改めてRTCは初期値とされた時刻から積算を始め、次回起動時に、Flash ROM内のBIOS/UEFIのデフォルト値の設定情報がCMOSに読み込まれ、接続しているディバイスの情報も改めて読み込まれるのである。そのため、CMOSクリア後は、RTCの時刻を再設定し、設定を変更していた事項は設定し直す必要がある。

 これに対して、「デフォルト値をロードする」を実行すると、Flash ROM内のBIOS/UEFIからデフォルト値がCMOSに読み込まれることになる。「ロードする(Load)」と表現されるのはそのためである。この場合、設定変更値がデフォルト値に戻るだけである。

 Flash ROMに保存されているBIOS/UEFIというファームウェア自体は、通常書き換えられることがない以上、「BIOS/UEFIの初期化」という表現は不適切であるとする意見がある(Wikipedia、「Basic Input/Output System」)。

 勿論、BIOS/UEFIのバージョンを更新すれば、当然Flash ROM内のBIOS/UEFIは新たなバージョンに書き換えられる。その際、旧バージョンに戻すことはできないとするマザーボードも多いが、旧バージョンあるいは工場出荷時のバージョンに戻すことが可能なものもある。この場合こそが「BIOS/UEFIの初期化」と呼ぶことができると言うのである。

 しかしながら、PCにおいてハードウェアとOSの橋渡しを行うBIOS/UEFIというファームウェアの持つ重要な役割を考えると、上記の如くいずれの意味にも解されうる「BIOS/UEFIの初期化」といった表現を用いることはできる限り避けるべきであろう。

 むしろ、Flash ROMは取り外して、ROMライター(EEPROM Programmer)でBIOS/UEFIを消去して書き換えることが可能であるから、この場合の「消去」こそがまさに「BIOS/UEFIの初期化」であると言えるかもしれない。

◆ また、UEFI環境においてCMOSクリアを行う場合に、留意しておかなければならないことは、マザーボード上のNVRAMに保存される起動OSに関するエントリ情報(NVRAM変数、NVRAM variables)も消去されるということである。Boot Optionにブートエントリとして登録された各OSローダやその起動順位などの情報がNVRAMに格納されており、CMOSクリアを行えばそれらも当然失われる。そのため、OSが起動できないことにもなりかねない。

 ところが、OSやマザーボードによっては、ブートエントリにOSローダが存在しない場合、電源投入後自動的に接続ストレージの中からEFI System Partition(ESP)を探し出し、その中のOSローダ、特にWindowsのbootmgfw.efi(Windows Boot Manager、識別子{bootmgr})を検出してNVRAMにブートエントリが再登録されることがある(「Windows 10 PC UEFIの役割としくみ 」)。これは、UEFI仕様書(Version 2.6)にあるOS-Defined Boot Option Recovery(Section 3.4.1)ないしPlatform-Defined Boot Option Recovery(Section 3.4.2)による振る舞いなのであろうか。これを厄介と見る向きもあるが。

 そのような機能が備わっていなくとも、Linuxの場合、efibootmgrのパッケージを含んだをFedoraやUbuntuなどのLinux系のLive DVDやLive USBがあれば、efibootmgrコマンドで直接NVRAMのUEFI Boot Managerの設定を操作することが可能であるから、改めてブートエントリーを作成することができる。勿論、efibootmgrを使ってWindowsのOSローダをエントリに復活させることも可能である。

 Windowsに関しては、TechNetのライブラリに次のような記述がある(「BCDとNVRAMで重複しているファームウェア オブジェクトを削除する」)。

 bcdedit /enumコマンドを実行してBCD(Boot Configuration Data)を開くと、NVRAMのエントリとESP内のBCDのエントリが比較され、NVRAMのエントリのうちBCDに存在しないものが、BCDに追加される。bcdeditによってBCDを閉じると、BCDのエントリのうちNVRAMに存在しないものがNVRAMに追加される。

 だとすれば、回復オプションからコマンドプロンプトを呼び出し、あるいは起動ディスク等から直接Windowsを起動させてコマンドプロンプトを呼び出して、bcdedit /enumコマンドを実行して閉じるだけで両者は同期され、BCDのエントリがNVRAMのエントリに追加されることになる。これが功を奏さなければ、bcdedit /importコマンドによってBCDの全てのオブジェクトをNVRAMにコピーすることもできる。

 こうしてWindows Boot Manager(bootmgfw.efi)がエントリに登録され、ブート順位が1位に設定されることになる。次回起動時には、正常にWindowsが起動することになる。

 しかし、ESP内のBCDファイルが破損している場合には、上記の方法は使えないので、bcdbootコマンドを使ってBCDを再作成しなければならない(「BCDboot のコマンド ライン オプション」)。

 例えば、bcdboot C:\Windows /l ja-jpと打つと、C:\WindowsフォルダーにあるBCDファイルを使ってESP内にBCDブート環境ファイルが改めて作成される。それと同時にBCDBootは、NVRAM内にWindows Boot Managerのエントリを作成してくれるのである。

 なお、上記MSDNの「BCDboot のコマンド ライン オプション」のWebページにある説明(コマンドラインオプション、/s 項目内のUEFIの解説)には、日本語でこう記載されている。

 「既定では、BCDBoot は、ファームウェア上の NVRAM 内に Windows ブート マネージャー エントリを作成し、システム パーティション上のブート ファイルを識別します。/s オプションが使われない場合このエントリは作成されません。

 これは明らかに矛盾した表現である。/s オプションを使わないのが既定ではないのか。その場合、エントリは作成されるのか、されないのか。この記載には悩まされた。

 そこで、英語版の"BCDBoot Command-Line Options"を見ると、
 "By default, BCDBoot creates a Windows Boot Manager entry in the NVRAM on the firmware to identify the boot files on the system partition. If the /s option is used, then this entry is not created."、とある。「/s オプションが使われる場合このエントリは作成されません。」とすべきところ、誤って正反対の意味に翻訳されていたのである。混乱しないように。

 また、そこには「UEFI 2.3.1 仕様により、既定のファームウェア設定は、EFI システム パーティション (ESP) のファイル \efi\boot\bootx64.efi を開きます。」との記述もある。つまり、UEFIは、NVRAM内に起動順位が設定されていない、若しくは存在しない起動オプションを指定していた場合、又はいずれのエントリも実行することに成功しなかった場合には、ESP内の\efi\boot\bootx64.efiを読み取りに行くということになる(https://forums.ubuntulinux.jp/viewtopic.php?id=14565)。Windowsでは、インストール時にESPの\efi\Microsoft\boot内のbootmgfw.efiと同一のOSローダがbootx64.efiという名前で作成されているようである。これによって、万が一NVRAMの読み込みに失敗しても、Windowsは起動することが可能となるのである。(2016.9.15)

※ UEFIについては、こちらhttp://blog.phooen.com/blog-entry-50.htmlもご一読下さい。

◎2、HDD、SSD等のストレージを初期状態にすることを指す。【正確を期すべく、この項を書き改めました。(2016.2.7)】

 HDDやSSDの場合、初期状態とはどの状態を指すのであろうか。

 パーティションが作成され、そのパーティションはいずれかのファイルシステム(NTFS、FAT32、Linux ext4、Apple HFS等)に基づいてフォーマットされているが、それ以外のデータが存在しない状態をいうのか。

 パーティションが削除されて、物理上のドライブ内が全て未割当て領域となっている状態を指すのか。

 パーティションを作成することをパーティショニングというが、そのパーティショニングの方式には、MBR(Master Boot Record)とGPT(GUID Partition Table)の2つのスタイルがあり(パーティション・スタイルとも呼ばれる)、いずれのスタイルも施されていない状態をいうのか。

 ストレージの初期化が求められる場合、一般的には、パーティション・スタイル未設定の状態にすることまで要求されることはなく、その場合の初期化は、パーティションが作成されていない状態にすることを指すのが通常であろう。つまり、パーティションのない未割当て領域にすることが、ストレージの初期化であるといえる。

 初期化とフォーマットは混同されていることが多い。辞書などには、formatの訳に「初期化」を挙げているものが少なくなく、Wiktionaryの"initialize"では、"(computing) To format a storage medium prior to use"と説明されている。

 なるほど、初期化の一つがフォーマットだということも可能かもしれない。しかし、ストレージには、パーティションも作成されておらず、当然ファイルシステムも設定されていない状態が存在し、その状態にすることを「初期化」と呼ぶ以外に適切な呼び方がない以上、フォーマットも「初期化」としたのでは混乱の元である。パーティションを作成し、そのパーティション内をフォーマットすることによってストレージは特定のOS等に認識され、利用可能となるが、初期化はパーティショニングやフォーマティングを巻き戻す、それらとは逆向きの処理だということもできよう。

 また、近時のHDDは購入時の状態ではパーティション・スタイルが設定されていないこともあり、そのHDDをPCで使用する場合には、当然、MBRかGPTのどちらのスタイルを使用するかを決定しなければならないが、これを「ディスクの初期化」と呼ぶことがある。Windowsでは、「ディスクの管理」を開くときに、パーティション・スタイルが設定されていないディスクを検出すると、自動的に「ディスクの初期化」と題されたダイアログボックスが開き、MBRかGPTの選択が求められる。その後、パーティションの作成へと進むことになる。

 この用語法からも、ストレージにおける初期化は、ストレージを、MBRかGPTのいずれかのパーティション・スタイルが設定されいるものの、未だパーティションは作成されていない状態にすることと解される。

 この場合、注意すべきことは、HDDやSSDを初期化、即ち未割当て領域にしたとしても、それに保存されていたデータが全て消去される訳ではないことである。保存データを完全に消去するには、それ専用の抹消ソフトなどを使う必要がある(「Secure Eraseとは」参照)。そして、例えば、Secure Eraseを実行した場合には、ディスクに保存されたデータのみならず、MBRないしGPT領域の情報も全て抹消されるため、パーティション・スタイルも当然未設定となる。

 なお、「ボリューム」という用語も使われるが、これはOSから1つのドライブとして見える領域を指すと捉えることができる。ベーシックディスクでは、1つのプライマリパーティションは1つのボリュームとして認識され、拡張パーティションは論理ドライブごとに1つのボリュームとして認識される。Windowsにおいては、ディスクに対して、先ずPartition Managerがパーティションを作成し、それをVolume Managerが管理するのである。これに対し、Windows独自のダイナミックディスクでは、通常のパーティションの作成方式とは異なるLogical Disk Manager (LDM)によってパーティションが作成される。これをVolume Managerが、スパンボリューム・ストライプボリューム等として管理することになる。よって、ダイナミックボリュームは他のOSから認識されない。

 また、ベンダーがHDD等に対して行うHPA又はDCOの設定や特別なソフト等によって行うローレベルフォーマットと呼ばれる物理フォーマットは、一般の利用者が通常行う初期化や論理フォーマットとは当然区別される。

 ところで、MBR又はGPTを用いて2TBを超えるストレージを利用する場合には注意すべき点がある。

◆ MBRは、ご存知のように、物理ドライブの先頭のセクタ(512バイト)に配置され、ブートストラップコード領域やディスク・シグナチャ等(446バイト)、パーティション・テーブル(4エントリ、各16バイト)、ブート・シグナチャ(2バイト)から構成されている。パーティション・テーブルの各エントリには、それぞれアクティブ(起動)フラグやパーティションの開始位置やパーティション・タイプ(パーティション拡張子とも:この1バイトのコードがNTFSやext4といったファイルシステムの種類を決定する)等の情報が格納されている。

 1つのエントリにつき、パーティションの開始位置をLBA(Logical block address)方式のセクタ番号で指定するために4バイトが割り当てられ、そのパーティションの総セクタ数を定めるためにも4バイトが割り当てられている。これら2つの情報によってパーティションが作成される。4バイトは32bit(4×8bit)であるから、4バイトで識別可能な値は、2の32乗=4,294,967,296通りとなるが(数学的には2個から重複を許して32個とる順列、いわゆる重複順列)、セクタ数0を識別する必要があるため〔訂正:先頭のセクタ0にはMBRが作成されるため、パーティションとして使用可能な〕総セクタ数は4,294,967,296-1=4,294,967,295セクタとなる。1セクタは通常512バイトであるから、理論上はMBRディスクで設定可能な1パーティションの最大容量は、4,294,967,295×512=2,199,023,255,040バイト=2TiB-512バイトとなる。

◆ もっとも、パーティションの開始位置については、かつてHDDのアドレッシングに採用されていたCHS(Cylinder/Head/Sector)方式において、1シリンダ=63セクタとするデファクトスタンダードに基づき、パーティション境界をシリンダ境界に一致させていたことなどから、新たに登場したAdvanced Formatによって物理セクタが4,096バイトとされているHDDを古いOSで使用する場合に、少し厄介な問題が生じたりもした。

◆ GPTディスクのパーティションの最大容量については、1パーティション・エントリでパーティションの開始LBA、終端LBAを指定するために各8バイトが割り当てられいるので、理論的には、8バイト=64bit、1セクタ512バイトで計算すると、2^64 × 512バイト、即ち8ZiB〈ゼビバイト〉が定義できる上限となる(1ZiB=1,0241EiB〈エクスビバイト〉=1,048,576PiB〈ペビバイト〉=1,073,741,824TiB=1,099,511,627,776GiB)。GPTディスクのパーティションの個数は、128個までとなっている。

 しかし、この容量はあくまで理論上の値であって、例えば、Windows Server 2003 SP1、Windows XP x64 edition及びそれ以降のWindowsにおいては、RAW(未フォーマット)パーティションの最大サイズは、18EB〈エクサバイト〉であり、フォーマットされたパーティションでは256TBが最大サイズとなっている(各パーティションのファイルシステムが現行では、256TBに制限されているからである)("Windows and GPT FAQ")。

 Linuxにおいては、例えば、"Red Hat Enterprise Linux technology capabilities and limits"によると、Version 7の場合、Ext4ならば、最大ファイルシステムサイズは、50TBがサポートされており(理論上は、1EBとされる)、XFSならば、最大ファイルシステムサイズは、500TBがサポートされている(理論上は、16EBとされる)。

◆ MBRディスクで、2TB超のHDDに第2パーティションを作成しようとするならば、その開始位置がLBAで第4,294,967,295セクタ(LBAでは先頭セクタは第0セクタ)を超えてMBRで指定することは不可能であるから、そうならないよう第1パーティションの容量を2TiB-512バイト(2,199,023,255,040バイト)よりも少なくしておく必要がある。これは、第2、第3パーティションについても同様である。最終パーティションを除く全パーティションの容量を2TiB-512バイトよりも少なくして、最終パーティションの開始位置を第4,294,967,295セクタかそれより前の直近に定めることができれば、最終パーティションの最大容量は2TiB-512バイトとすることが可能となる。1セクタ512バイトのディスクおいては、MBRでは単一パーティションの容量の限界は2TiB-512バイトであるが、複数のパーティションを使えば、4TiB近くまで利用することが可能となるのである。

 この点に関して誤解した記述がWebに散見されるが、Wikipedia("Master boot record")にも、"Since partitioning information is stored in the MBR partition table using a beginning block address and a length, it may in theory be possible to define partitions in such a way that the allocated space for a disk with 512-byte sectors gives a total size approaching 4 TiB, if all but one partition are located below the 2 TiB limit and the last one is assigned as starting at or close to block 2^3-1 and specify the size as up to 2^32-1, thereby defining a partition which requires 33 rather than 32 bits for the sector address to be accessed."と明確に書かれている。

◆ このいわゆる「2TBの壁」には、も一つCommand Descriptor Block(CDB)の問題がある(「Over2TB」参照)。

 CDBとは、PCがストレージ等のディバイスと情報をやり取りする際に用いられるコマンドの仕組みを指す。これには幾つかの種類があり、10バイトCDBと12バイトCDBには、32bit LBAが使われ、16バイトCDBには、64bit LBAも使われる。少し古いディバイスは、10バイトCDB又は12バイトCDBにしか対応していないため、これが原因で2TBを超えるHDDを認識できないことがある。

 なお、上記の固定長CDB(fixed length CDB)のほかに可変長CDB(variable length CDB:可変幅は12~260バイト)もあるようである("SCSI Command Reference Manual", Seagate, 2014)。

 このCDBの制約により、OSが64bit版でGPTに対応しているにもかかわらず、2TB以上のHDDを認識しないという事態が生ずる。例えば、3TBのHDDは約746GBまで、8TBのHDDは約1.4TBまでしか認識しないということになる(一般にHDDの容量の表示は、SI接頭辞が使用されている)。その場合のCDBの正確な振る舞いは調べていないが、伝送されるセクタのアドレスが32bit LBAのフィールドを超えたところで0に回帰するのであろうか。ともかく、接続するUSBや拡張ボード等のドライバを最新のものに更新することによって解決できることも多い。

◆ しかし、パーティションを設定し直そうとしても、一旦認識された容量を変更できないことがある。その場合は、コマンドプロンプトでDISKPARTを用いて(管理者権限でコマンドプロンプトを開き、「diskpart」と入力して実行)、
「list disk」で、対象となるディスクの番号を確認し、
「select disk #(#にディスク番号を入力)」で、ディスクを選択し、
「clean」で、パーティションの管理情報が削除され、ディスク全体が未割当て領域となり、改めてパーティションを設定し直すことができるようになる。

◆ また、Windows等においてGPTディスクを作成しても、先頭セクタにはMBRが自動的に設定されることに注意する必要がある。これは、保護MBR(Protective MBR)と呼ばれる特殊なMBRで、GPT非対応のOSからGPTディスクにアクセスしようとしても、それを2TiB以内の単一の「GPT保護パーティション」と表示させ、内部のデータにアクセスすることはおろか、パーティションを削除することもできないようにしている。保護MBRは文字通りGPTのパーティション構成と内容を保護するものとなっている。

◆ ところが、GPTディスクに設定されるMBRには、この保護MBRと異なるハイブリッドMBR(Hybrid MBR)もある。GPTを適用する場合、ハイブリッドMBRという通常の機能を持つMBRを作成し、有効なMBRをGPTと併存させることも可能なのである("Hybrid MBRs"参照)。MacなどではGPTディスクを作成するとハイブリッドMBRが設定されるらしい。2TBを超えるHDDにおいて通常のMBRとGPTが併存する場合、Windowsでは、MBRが優先的に認識されるため、「大容量のMBRディスクの、最初の2TBのみが利用可能です。2TBより大きなサイズのパーティションの作成、およびディスクのダイナミックスへの変換はできません。」といったメッセージボックスが表示されることになるようである。

◆ さらに、Windowsでは、GPTディスクをブートディスクにするためには、UEFIに対応した環境が必要であり、BIOS環境ではGPTディスクは通常のデータディスクとしてのみアクセス可能である。Linuxには、UEFI非対応の環境であってもGPTディスクから起動できるディストリビューションもあるらしい。

◆ なお、MBRしか扱えないPCで2TB超のHDDを使用するために、論理セクタを512バイトから2,048や4,096バイトに仮想する方法もあり、そのためのアプリケーションもあるようである。

(正確を期すために2進接頭辞を使用している箇所もあるが、必ずしも徹底されているわけではありません。)

◎3、PC等を工場出荷時(購入時)の状態に戻すことを指す場合がある。

 既製のPCは、OSやアプリケーションがインストールされた状態で出荷されるので、その状態に戻すことは「リカバリ」又は「再セットアップ」などと呼ばれるのが通例である。

 【追記】:
《今まで、これに続けて、『ところが、一部のメーカー、ベンダーがこれを「初期化」と呼んでいるため、紛らわしいことになっている。』と書き、さらには『「リカバリ」・「再セットアップ」という意味で「PCの初期化」という表現を用いているメーカー、ベンダーには、無用な混乱を避けるよう、再考を促したいと思う。』ともしるしていた。

 以前、あるPCのマニュアルに「PCの初期化」と表記されていたのを見たことがあり、違和感を感じたことを覚えていたからである。

 しかし、Web上で「パソコンを初期化する」、「PCの初期化」といった表現があまりにも多用されていることが気になり、実際にPCのメーカーないしベンダーがPCを工場出荷時ないし購入時の状態に戻すことを何と表現しているのか、主なPCメーカーの公式サイトのサポートページやマニュアルを改めて調べてみた。
 その結果は以下の通りである。

 1. 東芝:「リカバリ(再セットアップ)」
 2. NEC:「再セットアップ」
 3. Panasonic:「再インストール」
 4. 富士通:「リカバリ」
 5. 日立:「再セットアップ」
 6. SONY:「リカバリー(再セットアップ・初期化)」
 7. EPSON:「リカバリー(再インストール)」
 8. ONKYO:「リカバリー」
 9. 三菱:「再セットアップ」
 10. SHARP:「再インストール」
 11. マウスコンピューター:「リカバリ」
 12. HP:「リカバリ」、「Recovery」(英語)
 13. DELL:「イメージリカバリ」、「PCリストア」、「Factory Image Restore」(英語)
 14. Gateway:「リカバリ」、「Recovery」(英語)
 15. ASUS:「リカバリー」、「再インストール」、「Recovery」(英語)
 16. Acer:「リカバリ」、「Recovery」(英語)
 17. Lenovo:「リカバリー」、「Recovery」(英語)
 18. Apple:「再インストール」、「Reinstall」(英語)

 PC製造の歴史の浅いSONYのみが「リカバリー」の言い換えとして括弧書きで「初期化」と表記している以外は、御覧のように「リカバリ」、「再セットアップ」、「再インストール」のいずれかの表現しか用いられていない。Appleも、Macを工場出荷時の状態にすることは「macOSを再インストール」と表現しており、「初期化」などといった表記は使っていない。かつて「PCの初期化」とマニュアルに記載されていたのを私が見たPCはどのメーカーであったのか、失念してしまい、見つけ出すことはできなかった。

 なお、ドスパラのサイトでは、「リカバリー(初期化)」という表記が多く見られ、私がかつて見たマニュアルではないものの、その販売PCのマニュアルには「Windowsの初期化方法」という項目がある(http://support.dospara.co.jp/download/faq/207371/n_manual.pdf等)。「PCの初期化」という表現を用いるPCベンダーが存在することは間違いないが、極めてわずかであるといえる。

 ともかくも、国内外の主要PCメーカー・ベンダー上記17社の公式サイトで「PCの初期化」という表現が用いられていない以上、この項の続きを次の通り書き改めることにした。(2016.8.14)》

◆ ところが、PCを工場出荷時ないし購入時の状態に戻すことをWeb上で「PCの初期化」と呼ぶ者が少なくないため、紛らわしいことになっている。

 ほとんどのPCメーカーないしベンダーが、その公式サイト又はマニュアルにおいて、「PCを工場出荷時(購入時)の状態に戻すこと」を「リカバリ」又は「再セットアップ」又は「再インストール」と呼んでいるにもかかわらず、敢えてこれを「PCの初期化」などと表記するならば、この「PCの初期化」が、PCのOSがインストールされているHDD等の初期化を指しているのか、PCをOSやアプリケーションがインストールされた工場出荷時ないし購入時の状態に戻すことを指しているのか、我々はこの言葉に出会うたびに、確認する作業を強いられることになる。

 殊に、PCに不慣れな人は、Web上に散見される「PCの初期化」がPCをどの状態に戻すことを指しているのか明確に理解することができず、それを「HDD/SSDの初期化」と混同してしまうことさえある。実際、質問掲示板において、「PCの初期化」という呼称が一般的だと思い込み、その呼称を使いつつも、その意味するところがよく分からず、戸惑っている投稿を幾つも目にすることができる。

 やはり、PCにおいて利用者が行う「初期化」は、ストレージに対する初期化という意味に限定し、PCを工場出荷時ないし購入時状態に戻すことは、ほとんどのPCメーカーによって用いられている「リカバリ」又は「再セットアップ」といったHDD/SSDの初期化と混同するおそれのない言葉で表現すべきであろう。

◆ また、海外のPCメーカーも、英語でPCをFactory Settingsに戻すと表現する場合、recover(y)やrestoreという語を使っており、initializeやinitializationという語は使っていないのである。

 さらに、Windows8、8.1、10には、「(この)PCを初期状態に戻す」という機能が備わっている。英語版でこれは、「Reset your(this) PC」と表記されており、「Initialize your(this) PC」とは表記されていない。これに対し、前述の「ディスクの管理(Disk Management)」における「ディスクの初期化」は、英語版では「Initialize Disk」と表記され、それを行っていないディスクは「Not Initialized(初期化されていません)」と表示されるのである。だからこそ、「Reset this PC」は、日本語版でも「このPCを初期化する」とは訳さず、「このPCを初期状態に戻す」と翻訳しているのである。Web上において安易に「PCの初期化」という表現を用いる人は、このMicrosoftの表記選択にも思いを致すべきである。

 因みに、Windows10で「このPCを初期状態に戻す」の「全てを削除してWindowsを再インストールする」を実行したとしても、通常の「再セットアップ」と異なり、購入時の状態になるのではなく、更新プログラムが適用された状態となるとのこと(「Windows 10でハードディスク内のデータから再セットアップを行う方法」)。

◆ しかも、「PCの初期化」は、PCの動きが鈍くなった場合の回復手段とされることすらある。

 確かに、PCをリカバリすれば一時的にはある程度PCの動きは軽快になるが、PCが重くならないような処置を採らなければ直ぐに元の状態に戻るであろうし、必要なアプリケーションを再インストールし、バックアップしたデータを戻し、遺漏なく種々の設定をし直すという気の滅入るような手間を考えると、到底お勧めできる手段ではない。

 いずれのPCのマニュアルも、リカバリ(再セットアップ)をPCが容易には回復しえない不具合に見舞われた場合(ウィルスに感染した場合等)の最終手段としているのは、事の性質からして当然といえば当然である。

 寧ろ、PCが重くなる原因を取り除き(定期的な不要ファイルの削除とデフラグ、Prefetchフォルダ内の定期的な整理、不要時のWeb切断、常駐ソフトの見直し、システム保護の無効化等々)、ハードウェアを交換・増設する(HDDのSSDへの交換、CPUやグラフィックスカードの交換、メモリの増設等々)方が、PCの動きを軽くするためには有効であろう。

◆ なお、自作PCにおいては、好みのパーツを購入し、譲り受け、流用してマシンを組み上げ、そこへお気に入りのOSをシングルないしマルチブートという形でインストールし、様々なアプリケーションをインストールしていくのであるから、自作する者の間では「PCの初期化」といった漠然とした不明確な言葉が用いられることはない。

◎4、光学ディスク、フロッピーディスク等のフォーマットを指す場合がある。

 記憶媒体(記録媒体、storage media、recording media、memory media)は、広義には、磁気的なHDDやフロッピーディスク、電子的なSSDやUSBメモリ、光学的なDVD-RやBD-R等を含む、情報を記録する媒体の総称として用いられる。しかし、それは、狭義には、情報を記録する装置(ドライブ)とそれによって情報が記録され、その情報を保持する物体が分離可能である場合に、情報が保存されている物体を指すこともある。その場合、特に「記憶メディア・記録メディア」と片仮名で表記することが多いようである。

 この狭義の記録メディアであるCD-RやDVD-Rなどの光学ディスクやフロッピーディスクにおいては、フォーマットと初期化はほぼ同義に使用されている。

 フォーマットと初期化を明確に区別すべき前述したHDD、SSD、USBメモリなどの記憶媒体とどこが異なるのか。両者を分ける大きな相違点は、パーティションの有無である。HDD等には、パーティションという区画が用いられるのに対して、光学ディスク等には用いられない。HDD等においては、繰り返しになるが、パーティションが作成されていない状態、いわゆる未割当て領域という状態が存在し、その状態にすることが初期化である。パーティションが作成され、その領域内に特定の記録方式が適用されること、即ちフォーマット(より正確には、論理フォーマット)されることによって、記録することが可能となる。これに対し、光学ディスク等では、パーティションという区画は使用されず、各ディスクは単一の領域として認識され、ディスクの種類ごとに採用されている記録方式に基づく処理、即ちフォーマットがディスクに施されることにって使用可能となる。

 光学ディスク等の場合、それを使用可能な状態にする作業は、フォーマットのみであるため、これを初期化と呼ぶこともあり、そう呼んだとしても誤解するおそれはないのである。

●三、改めて初期化とは

 こうして見てくると、コンピュータにおける「初期化(initialization)」とは、単なる初期状態にすることではない。さらに言えば、リセット(reset、初期状態に戻すこと)やリカバリ(recovery)・再セットアップという操作に見られる「元に戻す」という概念すら、「初期化」には含まれていないと考えられる。購入したばかりの未使用のHDDを「初期化」する場合を考えてみれば分かろう。

 改めて、コンピュータにおける「初期化」とは、「ソフトウェア又はコンピュータを構成する若しくはそれに付属する独立性を有する装置を、その利用を開始することが可能となるよう、共通に定められている状態にすること」と定義することができるのではなかろうか。そうだとすれば、各メーカーやベンダーあるいは自作する者がそれぞれに種々のディバイスを組み合わせ、様々なOSやアプリケーションをインストールして構成するPCにおいては、そもそも使用開始可能な共通の状態など措定しえようはずがない。そうである以上、「PCの初期化」が何を意味するのか理解不能とならざるをえない。にもかかわらず、「PCの初期化」という曖昧で不明確な言葉を使い続ける限り、混乱と誤解は避けようがないであろう。

tag : 初期化 フォーマット リカバリ 再セットアップ MBR GPT CDB

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そんぷうし ふうえん

Author:そんぷうし ふうえん

忙中閑は、こっそりと見出す。
カミさんと子どもたちが寝静まるのを待って、夜な夜なPCの前に端座し、その不可思議なる箱の内奥にそっと手を入れては、悦に入る日々なのであります。
時としてその手はPC以外の内奥にも。


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