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水冷CPUクーラー交換

一、簡易水冷CPUクーラーの異常
 メインの自作機では、今では少し古さを感じざるを得ないが、Intel Core i7-3930Kが稼働している。2015年12月現在、Intelのコンシューマ向けCPUのハイエンドモデルであるi7-5960Xであっても、その処理能力はベンチマークにより最大で3~4割このi7-3930Kより勝っているといった程度である(「Haswell-E版新Core i7速報レビュー!」、「Intel Core i7 5960X,5820K,3930Kの性能を比較してみた」等参照)。現使用CPUの2倍以上の性能を持つものが現れた時が、CPUの買い替え時と考えており、Xeonのフラグシップモデルでさえまだそこまでは到達していないようなので、今暫くは3930Kに頑張ってもらうことになろう。

 そのCPUを冷やすためにIntel RTS2011LC (BXRTS2011LC)を使ってきた(図-1)。

 図-1
 CPUCooler1-RTS2011LC

 マニアックにOCを追求する訳ではなく、4.2GHz程度と軽くOCをしているだけなので、メインテナンスフリーのオールインワンとも言われる簡易水冷のCPUクーラーで充分なのである。これを使い始めて2年半ほど経ったある日、少しばかりCPUに負荷のかかる作業をしていたときに、CPUの温度がいつもよりも高いことに気付いた。CPUの温度などを常時監視するために、HWMonitor Meterというガジェットを使っている。このガジェットは、表示項目や表示方法などを微細に設定することが可能であり、非常に重宝している。これが、普段であればCPUの温度は40℃前後となるはずの軽い作業であるにもかかわらず、51~55℃を示しているのである(図-2)。

 図-2
 CPUCooler2-HWMonitor

 ラジエータに埃が溜まっているせいかと思い、掃除してみたが、CPUに高い負荷をかける処理を行わせるとあっという間に90℃を超えかけたため、直ぐに処理を停止した。これはおかしい。

 ファンは回っており、Intelのロゴのイルミネーションも光っている。チューブを触ってみる。冷却液をポンプからラジエータに送るチューブは高温になるが、もう一方のラジエータからポンプに向かうチューブは一向に温度が変わらない。ポンプが正常に作動していないようである。

二、ENERMAX LIQMAX 120Sに交換
 3年保証の期間内ではあるが、保証交換には日数がかかる。このままの使用はCPUに極めて危険であり、このLGA2011に装着できる予備のCPUクーラーを持っていなかったので、新たにクーラーを購入することにした。

 目に止まったのは、ENERMAXのLIQMAX 120Sシリーズである。 もちろん、簡易水冷クーラーである。ファンのLEDは要らないので、ELC-LM120S-HPにすることにした(図-3)。

 図-3
 CPUCooler3-LM120S-HP

 TDP 300Wに対応すると言う。ENERMAXには、この他に少し高級なLIQTECH 120X(ELC-LT120X-HP)とLIQTECH 240(ELC-LT240-HP)があり、さらにTDP 320Wに対応するLIQMAX Ⅱ 120S(ELC-LMR120S-BS)とTDP 350Wに対応するLIQMAX Ⅱ 240S(ELC-LMR240-BS)という機種もあるが、TDP 130Wに過ぎない3930Kには、これで充分であろう。

 特に、LIQMAX 120SとLIQTECH 120XとLIQMAX Ⅱ 120Sの三者を比べると、ラジエータの大きさはほぼ同じだが、ポンプの回転数は、順に2,300rpm、2,500rpm、2,700rpmであり、ファンは、最前者が1個、後二者が2個となっており、その分最前者の値段はお手頃となっている。

 因みに、LIQTECH 120XやLIQMAX Ⅱ 120Sのようにラジエータを2つのファンで挟み込む方式を「タンデム」という名称で呼んでいる文章を見かけ、その正確な意味が分からなかったので、少し調べてみた。

 これは、おそらく英語の"tandem"だろうから、OEDを見る。tandemは、元来、縦につないだ二頭立ての馬車を指す言葉であり、そこから「縦に並んで(だ)」、「協力して動く」、「共同して働く」等の意味の副詞・形容詞として使われ、"tandem bicycle"や"tandem canoe"等の略称としても用いられる。また、"in tandem"という形で、「縦に並んで」、「協力して・連携して」、「一緒に」といった意味を表す。

 webで検索してみる。
 日本伝熱学会論文集所収の『電子機器の冗長冷却用タンデム構成ファンの性能特性(Performance Characteristics of Tandem-Structure Fans for Redundant Cooling of Electronic Equipment)』(松島 均、福田 洋 日立製作所)等に見られるように、縦に並べて配置したファンを「タンデム構成ファン(tandem-structure fans)」又は単に「タンデムファン(tandem fans)」と呼ぶようである。

 但し、「山洋電気は、2つのファンをつなぎ、各々逆の方向に回すことで風量を稼ぐ二重反転ファンを展示。同方向に回すタンデムファンと比較して、騒音を抑えつつ風量が29%向上するという」(『エレクトロニクス技術展「TECHNO-FRONTIER 2007」開催~サイズが低背のCPUクーラー「MININJA」を展示』)という文章を見ると、タンデム方式とは、厳密には同種同類のファンを縦列に配置することを指すようである。

 例えば、"Both fans are designed to work in tandem as a push-pull-combination where one fan pushes cold air over the tower fins, while the other fan on the opposite site pulls out hot air and then exhausts it through the cases back side." 「2つのファンは、1つのファンがタワー型のフィンに冷たい空気を送り込み、他方、反対側のもう1つのファンは熱い空気を吸い出してそれをケースの背面から排出するというプッシュ・プル・コンビネーションとして、連携して機能するように設計されている。」("Thermaltake Launch Next-Gen Overclocking CPU Cooler Frio OCK")という表現がある。これは、CPUクーラーにおいてヒートシンクを挟み込む方式のファンを正確に説明している文であるが、この場合の"work in tandem"は、「協力して・連携して働く」という意味であろう。

 次のような文もある。
 "Therefore, we ran our Hydro 100i with its dual 120mm fans set to exhaust, mounted at the top of our case, working in tandem with natural convection to remove heat." 「従って、私たちは、二連の120mmファンを排気用に配置し、ケースの上面に取り付け、自然の上昇気流と協力して熱を逃がすように機能させながら、Hydro 100iを動かした。」("The Complete Guide to CPU Coolers: Downdraft vs. 120mm vs. 140mm vs. Liquid")という文である。これは、CORSAIRのHydro Series H100iという240mmのラジエータに120mmのファンを横に2つ並べるタイプの簡易水冷CPUクーラーについての記述である。このように必ずしもラジエータ等をファンで挟む方式ではない場合にも、"in tandem"という表現は盛んに用いられている。

 "in tandem (with)"は、おそらく「縦に並んで」という意味よりも「(~と)協力して・連携して」という意味で用いられることが多いようである。

 確かに、縦につなげて駆動させるファンは、"tandem fans"あるいは"stacked fans (vertically)"「(垂直に)重ねたファン 」などと表現されるが、その間に他の機器(ヒートシンクやラジエータ等)が介在する場合は、"tandem fans"と表現することはあまり好まれないようである。英語圏の人は、tandemという言葉について、縦に連続してつながっているというイメージを持っているのであろうか。専門の技術用語としては、どうなっているのか確認できなかったが…。

 では、一般的にCPUクーラーにおいてヒートシンクやラジエータをファンで挟み込む方式を英語圏では何と呼ぶのか。

 例えば、様々なヴェンダーの360mmのラジエータ製品を6つのファンで挟んで、その冷却能力等をテストしているwebサイト、'Push/Pull Radiator Setups or "How I learned to stop worrying and love that more fans = less noise…"'には、'Here we can see, that a "good" radiator in push can in fact out perform a "bad" radiator in push/pull.'などと表記されている。

 片側だけに空気を送り込むようにファンを取り付けることを、単に"push"、片側だけに空気を吸い出すようにファン取り付けることを、"pull"と呼び、従って、両側にファンを取り付けることを、"push/pull"と呼ぶのである。

【なお、このサイトの標題は、1964年公開の映画、"Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb"、邦題は『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』をもじったものであろうから、「プッシュ/プル・ラジエータ構成または私は如何にして心配するのを止めてファン多数=ノイズ減少であることを愛するようになったか…」とでも訳すべきであろうか。この筆者はなかなかの映画通である。】

 放熱器を両側から挟むファンを英語では、
 "fans in (a) push-pull configuration"
 "fans in push-pull setup"
 "push-pull fansなどと表記し、
 そのようなファンシステムを
 "a push-pull fan system"と表記するようである。

 それゆえ、日本の水冷マニアの人達も、放熱器をファンで挟むことを英語の音のまま、「プッシュ・プル」と呼んでいるようである。


 閑話休題。話は、ファン1つのELC-LM120S-HPついてである。

 対応するCPUソケットは、
 Intel : LGA 2011-v3 / LGA2011 / 1366 / 1156 / 1155 / 1150 / 775
 AMD : AM2 / AM2+ / AM3 / AM3+ / FM1 / FM2 / FM2+
 となっている。
 なお、Intelの新世代Skylakeは、LGA 1151ということだが、それに使うことも可能らしい(Skylakeについてはよく知らないので確認は各自で)。Intelについては、ほぼ全てのソケットに対応していることになる。

 ENERMAXの電源は2台のPCで使っており、かつては高価な部品を使っている割に内部の造りに粗雑さが見られるとする向きも一部にあったが、幸いこれまで不具合には遭遇していないので、CPUクーラーについてもENERMAXを信用してみる。殊に、『ENERMAX「LIQTECH 120X」分解』という記事を読むと、その製品はかなり精巧に造られていることが分かり、水冷クーラーについては信頼が措けると判断し、直ぐさま購入、交換となった。

三、LIQMAX 120Sの冷却能力
 ケースは、Cooler MasterのCM 690 II Plus rev2であり、
 前面に、140mmファン1基、上面に、120mmファン2基を装備している。
 ラジエータは、ファンを「プッシュ」として背面に設置。

 CPUの冷却状況をOCCTで示す(室温18.6℃)。

 図-4(アイドル時)
 CPUCooler4-OCCT1

 図-5(負荷時)
 CPUCooler5-OCCT2

 ファン及びポンプの回転数
 Pump : 2380rpm(2419rpm:負荷時)
 Radiator Fan 120mm : 1970rpm(2397rpm:負荷時)
 Front Fan 140mm : 1062rpm
 Top Front Fan 120mm : 1219rpm
 Top Rear Fan 120mm : 1148rpm

 御覧のようにアイドル時が、21~28℃、負荷時が、48~59℃程度である。室温が少し低く、OCといってもたかだか4.2GHzほどで、単に倍率を上げているだけであるから、割り引いて見なければならないが、120mmのラジエータにプッシュファン方式としては、CPUを非常によく冷やしていると思われる。筐体内の他の主な発熱源としては、ビデオカードが、ゲームをしないためGIGABYTEのGV-N660OC-2GD(GeForce GTX 660)、HDDが、5台である。

 RTS2011LCが突然壊れてしまったので、そのデータを示すことはできないが、RTS2011LCよりもELC-LM120S-HPの方が、少なくとも我が機の環境では高い冷却能力を発揮していることは間違いない。総じて3~5℃低い。

四、ガジェットに救われた
 実は、この記事を書いたのは、単にENERMAXのELC-LM120S-HPの優れた冷却性能を示したかったからだけではない。これは随分前の事柄であり、このクーラーの発売開始も2年ほど前であるから、取り立ててブログに書かずともよかったといえる。

 しかしながら、CPUクーラーの不調に直ぐに気が付いたからよかったものの、もしこれに気付かずにPCを使用し続けていたならば、どうなっていたか、ということなのである。発見が遅れていれば、おそらくCPUのみならずマザーボードも破損していたであろう。もっとも、CPUが異常に加熱した場合、PCは強制終了するように設定されているので、必ずしもそうなるとは限らないが、異常加熱のためCPUがおシャカになったとはよく聞く話である。

 大事に至る前にこの異常にいち早く気付かせてくれたのは、前述した如くHWMonitor Meterというガジェットである。

  この世にたえてHWMonitor Meterのなかりせば…。

 それほど大層なものではないが、これを始めとしてCPUやメモリその他のハードウェアの稼働状況等を常時モニターしてくれる小振りで簡潔なガジェットは、Windows PCに欠くべからざる「小道具」であると、今回の件により改めて確信することになった(「ガジェットをなぜ見捨てる」参照)。

 そのガジェットを突如として廃止し、Windows 10においても復活させなかったMicrosoft社には、本事例によりその有用性は明らかである以上、ガジェットの復活を改めて懇請する次第である(「Windows 10 Technical Previewを入れる」参照)。

 これこそが、寧ろ本記事の主眼であるといえよう。

tag : 簡易水冷CPUクーラーLIQMAXLIQTECHELC-LM120S-HPRTS2011LCBXRTS2011LCガジェットタンデムtandem

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そんぷうし ふうえん

Author:そんぷうし ふうえん

忙中閑は、こっそりと見出す。
カミさんと子どもたちが寝静まるのを待って、夜な夜なPCの前に端座し、その不可思議なる箱の内奥にそっと手を入れては、悦に入る日々なのであります。
時としてその手はPC以外の内奥にも。


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