dynabookの液晶パネル交換と磁気センサの誤作動
一、
知合いから東芝のノートPC、dynabook EX/33Jを譲り受けた。液晶に何も映し出されないものである。当初は、HDDやメモリに異常がなければ、それらを取り出して使おうかとも考えたが、OSがVISTAであったので、Windows XPのノートPCを未だに使っている子供のために液晶パネルを交換して蘇生させてみることにした。VISTAは2017年4月までサポートが延長されている。
もちろん、基板内のグラフィックスのディバイスそのものがやられていれば、液晶パネルが無駄になるので、中古やジャンク品を物色することにする。念のため外部モニターを接続してみると、画像は出力されており、大丈夫そうである。
因みに、「液晶パネル」とは、通常、駆動回路や光源等を含まないものをいい、その液晶パネルにそれらを付加したものを「液晶モジュール」というらしいが(「液晶ディスプレイ」、Wikipedia)、ノートPC等の液晶ディスプレイを構成するものとして、液晶パネルに駆動用プリント基板やバックライト等、インバータ回路以外の必要な構成部品を取り付けたものが、一般的には「液晶パネル」と呼ばれている。ここではその通称に従うことにし、それを単に「液晶」と略する場合もある。
二、
dynabook EX/33Jの中古の液晶パネルとインバータが手に入ったので、早速、交換することに。交換手順は、Satellite J32の液晶交換方法(「dynabookをもっと楽しもう!」)を参考にさせてもらった。
1.先ず、AC電源を抜き、バッテリーパックを取り外して、ディスプレイの四隅にある丸いゴム緩衝材を、マイナスの精密
図-1

2.ディスプレイの枠を取り外す。ディスプレイ枠(図-2)は多数のフックで固定されているので、一つずつ外側へ
図-2

3.次いで、液晶を固定している左右の金属枠のネジを取り外す(図-3)。なぜか上から3番目はネジ留めがされて
図-3

図-4

4.液晶を枠から外し、キーボードの上に倒す。液晶に傷をつけないために、図-5のように何らかの緩衝材を敷いて
図-5

5.液晶裏面上部の駆動制御コネクタとインバータのコネクタを丁寧に引き抜く。但し、駆動制御コネクタは透明のテープ
図-6

6.新たな液晶と交換(図-7)。駆動制御コネクタを接続し直し、新たな粘着テープで固定する。念のためインバータ
図-7

上記の手順を遡って、元の状態に戻す。
三、
これで、スクリーンに画像が出るはずである。ところが、スクリーンは真っ暗なままである。よく見ると、うっすらとかすかに画像が映し出されている。バックライトが点灯していないようである。
バックライトにLEDを使う最近の液晶とは異なり、従来の液晶はバックライト用の光源として冷陰極管という蛍光管が使われており、その調光を行うためにインバータという回路が用いられているという。
交換した液晶パネルもインバータ回路も動作確認がなされている品である。にもかかわらず、バックライトが点灯していない。ご存知のようにノートPCはディスプレイを閉じると液晶パネルの寿命を縮めないためにバックライトを消灯するようになっており、これは、ひょっとして、その検知装置が誤作動を起こしてしているせいではないか。そう疑って、ディスプレイの開閉に連動するスイッチの類いを探してみた。古いノートにはヒンジの辺りにそのようなスイッチがあり、それがゴミなどの付着によって押されたままの状態になっているのではないかと思ったのである。
しかし、外形からは、そのようなスイッチは見当たらない。先程、取り外したディスプレイ枠の内側を見ると、右上隅に磁石が取り付けられている(図-8)。おそらく、この磁石の接近・遠離を検知するホール素子等を用いた磁気センサが本体側にあり、それがバックライトの消灯を始めとするディスプレイの開閉に伴う種々の作用のスイッチングを行うのであろう。それが、何らかの誤作動を起こしていると考えられる。
図-8

四、
そこで、何はともあれ、本体を分解して磁気センサを拝むことにする。磁気センサが故障しているのであれば、どうしようもないが、と思いつつ。
1.先ず、本体を裏返して、図-9の○で囲ったネジを外す。
図-9

2.表に戻し、図-10に示したキーボードの上部の細長いカバーを外す。F1キーを押し下げて、その位置のカバーの
図-10

図-11

3.キーボードを固定しているネジが2本見えるので(図-12)、それらを外し、キーボードのネジ穴の部分を持ち
図-12

図-13

4.キーボードのケーブル(正式にはフレキシブル・フラット・ケーブル:FFCと言うらしい)をコネクタ端子から抜いて、
【追記】:滅多にノートPCを分解することがないので、このようなケーブルのコネクタには抜け防止のためにストッパー
図-14

5.上の図-14に示した5か所のネジを外し、タッチパッドとスピーカーのコネクタを抜けば、筐体を取り外す
図-15

6.筐体を取り外すと、図-16のように小さな磁気センサが姿を現す。
図-16

五、
しばし、磁気センサとにらめっこ。素人にはこれといった手だてが思い付く筈もない。さしたる根拠もないまま、磁気を帯びているドライバーの先端を近づけ、そーっと離してみた。磁気センサないしその近接部分が何らかの原因で着磁したために、バックライトが消灯されているのではないかと考え、僅かでも消磁できればと思った次第である。
試しに液晶を接続して電源を入れてみると、図らずもdynabookのロゴが映し出され、バックライトが点灯した。磁気センサが損傷していたならば、購入した液晶が無駄となるところであったので、喜びも一入である。
どのような理由で磁気センサが復活したのかは、もちろん不明である。そもそも、着磁していたことを確認した訳ではないので、それが原因とも断定できない。だが、もし、バックライトの常時の消灯状態が、磁気センサ回りの着磁が原因である場合には、消磁器という機器が販売されているようなので、それを使う方が確実であり、安全であろう。
本記事が、daynabook EX/33Jだけでなく、その筐体等が類似のEX/33H、EX/63J、EX/63Hを分解掃除しようとする方、あるいはそれらの液晶パネルやインバータやキーボードの交換を試みようとする方の参考になれば幸いである。
なお、CPUを交換する方法については、実際にCeleron 900をT8300に換装したので、その手順を記録した「dynabookのCPU交換」を御覧下さい。
知合いから東芝のノートPC、dynabook EX/33Jを譲り受けた。液晶に何も映し出されないものである。当初は、HDDやメモリに異常がなければ、それらを取り出して使おうかとも考えたが、OSがVISTAであったので、Windows XPのノートPCを未だに使っている子供のために液晶パネルを交換して蘇生させてみることにした。VISTAは2017年4月までサポートが延長されている。
もちろん、基板内のグラフィックスのディバイスそのものがやられていれば、液晶パネルが無駄になるので、中古やジャンク品を物色することにする。念のため外部モニターを接続してみると、画像は出力されており、大丈夫そうである。
因みに、「液晶パネル」とは、通常、駆動回路や光源等を含まないものをいい、その液晶パネルにそれらを付加したものを「液晶モジュール」というらしいが(「液晶ディスプレイ」、Wikipedia)、ノートPC等の液晶ディスプレイを構成するものとして、液晶パネルに駆動用プリント基板やバックライト等、インバータ回路以外の必要な構成部品を取り付けたものが、一般的には「液晶パネル」と呼ばれている。ここではその通称に従うことにし、それを単に「液晶」と略する場合もある。
二、
dynabook EX/33Jの中古の液晶パネルとインバータが手に入ったので、早速、交換することに。交換手順は、Satellite J32の液晶交換方法(「dynabookをもっと楽しもう!」)を参考にさせてもらった。
1.先ず、AC電源を抜き、バッテリーパックを取り外して、ディスプレイの四隅にある丸いゴム緩衝材を、マイナスの精密
ドライバーなどを隙間に差し込んで、ゆっくりと剥ぎ取る(図-1)。ゴムは両面テープ様の物でネジの頭に接着されているだけである。元に戻した場合の接着力の低下を防ぐために、粘着剤の付いた面を直接手で触れたり、ゴミが付着しないようにしておく。
図-1

2.ディスプレイの枠を取り外す。ディスプレイ枠(図-2)は多数のフックで固定されているので、一つずつ外側へ
引き上げるようにフックを外していく。天板側のフックがかかる部分は非常に脆く、一気に剥がそうとすると壊してしまう恐れがあるので、細心の注意を払って枠を外す必要がある。
図-2

3.次いで、液晶を固定している左右の金属枠のネジを取り外す(図-3)。なぜか上から3番目はネジ留めがされて
いない。4番目のネジは、ドライバーが天板と干渉して回しづらいので、天板をヒンジに固定してあるネジを少し緩めると、外しやすい(図-4)。また、インバータを固定しているネジも外しておかなければ、インバータをおおうケースがコネクタの取り外しの邪魔になる。
図-3

図-4

4.液晶を枠から外し、キーボードの上に倒す。液晶に傷をつけないために、図-5のように何らかの緩衝材を敷いて
ゆっくりと倒す。液晶パネルは御覧のようにSamsung製であり、交換用に購入した液晶パネルはLG製であった。
図-5

そういえば、東芝モバイルディスプレイ(TMD)が、シンガポールの中小型液晶パネル工場を台湾の友達光電(AUO)に売却して液晶パネルの海外生産から撤退し、さらにノートPC向け薄型・高性能液晶パネル生産から撤退したのは、2010年であった。本機は2009年製であるが、既にこの時点で本家の東芝はdynabookに子会社であるTMDの液晶パネルを使っていなかったのである。
液晶パネルの生産は、韓国・台湾の企業が中心となってきており、もはやその趨勢に抗いえない以上、彼等が東芝製や日立製の高性能・高品質の液晶パネルに比肩する、あるいはそれを超えるものを生産することができるようになることを、消費者としては願うしかない。
液晶パネルの生産は、韓国・台湾の企業が中心となってきており、もはやその趨勢に抗いえない以上、彼等が東芝製や日立製の高性能・高品質の液晶パネルに比肩する、あるいはそれを超えるものを生産することができるようになることを、消費者としては願うしかない。
5.液晶裏面上部の駆動制御コネクタとインバータのコネクタを丁寧に引き抜く。但し、駆動制御コネクタは透明のテープ
で接着されているので、それを剥がす必要がある。インバータを交換する場合は、反対側のコネクタも外しておく。 図-6はインバータの両側のコネクタを抜いたところである。
図-6

6.新たな液晶と交換(図-7)。駆動制御コネクタを接続し直し、新たな粘着テープで固定する。念のためインバータ
も交換する。
図-7

上記の手順を遡って、元の状態に戻す。
三、
これで、スクリーンに画像が出るはずである。ところが、スクリーンは真っ暗なままである。よく見ると、うっすらとかすかに画像が映し出されている。バックライトが点灯していないようである。
バックライトにLEDを使う最近の液晶とは異なり、従来の液晶はバックライト用の光源として冷陰極管という蛍光管が使われており、その調光を行うためにインバータという回路が用いられているという。
交換した液晶パネルもインバータ回路も動作確認がなされている品である。にもかかわらず、バックライトが点灯していない。ご存知のようにノートPCはディスプレイを閉じると液晶パネルの寿命を縮めないためにバックライトを消灯するようになっており、これは、ひょっとして、その検知装置が誤作動を起こしてしているせいではないか。そう疑って、ディスプレイの開閉に連動するスイッチの類いを探してみた。古いノートにはヒンジの辺りにそのようなスイッチがあり、それがゴミなどの付着によって押されたままの状態になっているのではないかと思ったのである。
しかし、外形からは、そのようなスイッチは見当たらない。先程、取り外したディスプレイ枠の内側を見ると、右上隅に磁石が取り付けられている(図-8)。おそらく、この磁石の接近・遠離を検知するホール素子等を用いた磁気センサが本体側にあり、それがバックライトの消灯を始めとするディスプレイの開閉に伴う種々の作用のスイッチングを行うのであろう。それが、何らかの誤作動を起こしていると考えられる。
図-8

四、
そこで、何はともあれ、本体を分解して磁気センサを拝むことにする。磁気センサが故障しているのであれば、どうしようもないが、と思いつつ。
1.先ず、本体を裏返して、図-9の○で囲ったネジを外す。
図-9

2.表に戻し、図-10に示したキーボードの上部の細長いカバーを外す。F1キーを押し下げて、その位置のカバーの
溝にマイナスの精密ドライバーなどを差し込んで、じわりと上へ持ち上げると簡単にカバーを外すことができる(図-11)。
図-10

図-11

3.キーボードを固定しているネジが2本見えるので(図-12)、それらを外し、キーボードのネジ穴の部分を持ち
上げて、図-13の程度にキーボードを斜めにすると引き抜くことができる。
図-12

図-13

4.キーボードのケーブル(正式にはフレキシブル・フラット・ケーブル:FFCと言うらしい)をコネクタ端子から抜いて、
キーボードを取り外す(図-14)。ケーブルはストッパーで挟み込むように固定されているので、それを矢印の方向にずらすとコネクタからケーブルを抜くことができる。
【追記】:滅多にノートPCを分解することがないので、このようなケーブルのコネクタには抜け防止のためにストッパー
やロックがあることを失念して、力づくで抜いてしまい、そのように解説してしまいました。大抵の方は気付いて、そんなバカな真似はしないでしょうが、訂正しておきます。失礼しました。
図-14

5.上の図-14に示した5か所のネジを外し、タッチパッドとスピーカーのコネクタを抜けば、筐体を取り外す
ことができる。タッチパッドのケーブルも、ストッパーを図-15の矢印の方向に引くとコネクタから抜くことができる。ヒンジ付近から表側の筐体を持ち上げて、固定されているツメを一つ一つ丁寧に剥がしていく。
図-15

6.筐体を取り外すと、図-16のように小さな磁気センサが姿を現す。
図-16

五、
しばし、磁気センサとにらめっこ。素人にはこれといった手だてが思い付く筈もない。さしたる根拠もないまま、磁気を帯びているドライバーの先端を近づけ、そーっと離してみた。磁気センサないしその近接部分が何らかの原因で着磁したために、バックライトが消灯されているのではないかと考え、僅かでも消磁できればと思った次第である。
試しに液晶を接続して電源を入れてみると、図らずもdynabookのロゴが映し出され、バックライトが点灯した。磁気センサが損傷していたならば、購入した液晶が無駄となるところであったので、喜びも一入である。
どのような理由で磁気センサが復活したのかは、もちろん不明である。そもそも、着磁していたことを確認した訳ではないので、それが原因とも断定できない。だが、もし、バックライトの常時の消灯状態が、磁気センサ回りの着磁が原因である場合には、消磁器という機器が販売されているようなので、それを使う方が確実であり、安全であろう。
本記事が、daynabook EX/33Jだけでなく、その筐体等が類似のEX/33H、EX/63J、EX/63Hを分解掃除しようとする方、あるいはそれらの液晶パネルやインバータやキーボードの交換を試みようとする方の参考になれば幸いである。
なお、CPUを交換する方法については、実際にCeleron 900をT8300に換装したので、その手順を記録した「dynabookのCPU交換」を御覧下さい。